みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『ダブル・ファンタジー』 村山 由佳

 

ダブル・ファンタジー〈上〉 (文春文庫)

ダブル・ファンタジー〈上〉 (文春文庫)

 

 

 

ダブル・ファンタジー〈下〉 (文春文庫)

ダブル・ファンタジー〈下〉 (文春文庫)

 

 おすすめ ★☆

 

『ミルク・アンド・ハニー』を読むために再読しました。

9年前の感想は・・・コチラ

『ダブル・ファンタジー』

 

【感想】
9年ぶりに読むと、わたしも多少成長したんだなぁと実感しました。。女性としての生き方はまさにファンタジーみたいだけど、、夫婦間の妻としての気持ちは理解できる。。家族のことは本音をさらけ出せない深い悩みだからこそ、重くて辛いんだと思いました。

 

 

『不在』 彩瀬 まる

 

不在

不在

 

おすすめ ★★★★☆

 

【感想】

疎遠だった父の死。父の遺言は「明日香を除く親族は屋敷に立ち入らないこと」
明日香は25年ぶりに幼い頃に住んでいた洋館を訪れる。そこには自分の知らない父の痕跡が鏤められていた。
仕事仲間、恋人、親族、父と最後に暮らしていた女。。様々な人との関わりで愛の固定観念が崩壊して行く。。

遺品整理。。一度だけ体験したことがあります。。人に使われていた不要物に愛着や記憶がない分、、持ち主の思い入れがわからぬまま、価値をどこで見極めるのか、なかなか困難。。思い出のある場所だけど、なんとなく他人行儀で深く踏み入れられない。。故人を通して、自分の内面や家族の意外な一面など、表と裏が時折垣間見えてしまう。。遺品整理の間は立ち止まり、あらゆる葛藤の日々ではあるが、、終わると気持ちは前を向いてる。。不思議なひとときです。。

厳格な祖父と横暴な父を自分に重ね、順調と思っていた仕事(漫画家)や恋愛に躓き、苦悩する明日香。。幸せになる漫画を描くがうまくいかない。。恋愛も。。さみしいときほどハッピーエンドを求めるが、、終わるとさらにさみしくなる。。この虚しさやフッと力が抜ける感覚が彩瀬作品からはいつも感じられる。。疲れるのだけど、次も読みたくなる彩瀬さん。。これはこれで楽しいです。。

『万引き家族』

【公式】『万引き家族』大ヒット上映中!/本予告 - YouTube

 

おすすめ ★★★★★

 

【内容紹介】

高層マンションの谷間、今にも壊れそうな平屋に治と信代の夫婦、息子の祥太、信代の妹の亜紀の4人が転がり込んで暮らしている。彼らの目当ては、この家の持ち主である初枝の年金だ。足りない生活費は、万引きで稼いでいた。冬のある日、近隣の団地の廊下で震えていた幼い女の子を、見かねた治が家に連れ帰る。体中傷だらけの彼女の境遇を思いやり、信代は娘として育てることにする。だが、ある事件をきっかけに家族はバラバラに引き裂かれ、それぞれが抱える秘密と切なる願いが明らかになっていく。

 

【感想】

一番感動したのは、、安藤サクラの存在。。どの映画も安藤サクラが出てくると、前のめりになってる自分がいる。。今回は前のめりどころから、演技を超えて、そのものなのではないかと、、引っ込み思案になりました。。感動というか迫力負けしました。。彼女の間が、胸に染み込んできて、、ただただ切ない。。リリーフランキーは『そして父になる』とほんの少し『凶悪』が混ざったような、、この方も演技とは思えない自然体。。万引きを教えてる父親を優しい人だなぁと思ったのは初めて(ダメですよ。真似しないように)。。リリーさんって器用な人。。茉優ちゃん、、不安定女子をやらせたら一番なんじゃないかなぁ。。素晴らしい。。小さな子役の女の子の表情。。とてつもなく、不安を煽る。。絶妙な表情がこの子の命を擦り切らせてるようで、、とっても辛い。。ということで、、キャストの演技力が良すぎて、、犯罪に手を染めている事を看過してしまいたくなる家族の物語でした。

マンションの狭間にある死角のような平屋の家に潜む家族。。社会からの死角みたいで、、そこだけが異質な空間。でも見事に生活をしている家族ごっこをする人達。。夢のような生活が海水浴を境に現実に引き戻されてしまう。。海水浴のシーンは夢物語の終点のようで、幸せな家族の心に残るワンシーンでした。。

この家族のそれぞれの背景が細かく描かれなかったことがとても良いと思いました。。そこは重要ではないのに掘り下げられたくないと、最後まで思って観てました。

 

駄菓子屋のおじさん(柄本明さん)の一言。。たった一言なんだけど、、グッときました。。

『勝手にふるえてろ』

 

勝手にふるえてろ [DVD]

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おすすめ ★★★★☆

 

【内容紹介】

24歳のOLヨシカは、中学の同級生“イチ”へ10年間片思い中。そんなヨシカの前に、会社の同期で熱烈に愛してくれる“ニ”が突如現れた。“脳内片思い”と“リアル恋愛”の2人の彼氏。恋愛に臆病で、片思い経験しかないヨシカは、理想と現実の狭間でもがき、苦しむが…。ラブコメ史上最もキラキラしていない主人公の暴走する恋の行方を描いた、痛快エンターテインメント。

 

【感想】

松岡茉優を味わった。。女子の脳内暴走を演じることができるなんてすごいわ。

笑える。。と思ったら、、笑えない。。のくりかえし。。この子、好きだわ。。絶滅種に対するオタクっぷりが可愛い。。初恋の相手「イチ」と絶滅種の話をしてる時や、「二」にホロっとする時の笑顔の茉優ちゃんはとにかく可愛い。。熱烈な「二」もかなり暴走男だけど、、暴走カップルは、ほのぼのと激情をくり返しそうで、、穏やかな気がしないなぁ笑。。ヨシカの宅急便の受け取り方がわたしにそっくりで、、びっくりした。。

 

 

『人間に向いてない』 黒澤 いづみ

 

 

人間に向いてない

人間に向いてない

 

おすすめ ★★★★★

 

【感想】

突然、息子が虫に変わった。。
原因不明の突如発生した奇病「異形性変異症候群」(虫、犬、魚、植物などに変異)...治療法が見つからないまま、グロテスクに変異してしまった子供に驚愕し、世話の放棄、暴行、殺害に至るケースまで起きてしまう。政府は「異形性変異症候群」は致死傷の病と定め、法的に死亡と認め、死亡届を提出する義務を課す事に。。
美晴の息子も「異形性変異症候群」となり、死亡と確定。。。姿形が変わり、意思の疎通もできず、人権を失う我が子。。大きな芋虫のような息子の姿に嫌悪感が広がるが育てる事を決意。。我が子を愛する事ができるのか。。

 

異形になり果てた子供を人間として向き合う事ができない父親と向き合おうと努力はしながら苦悩をする母親。。そもそも異形になる前から子供を人間として扱ってきただろうか?。。人並みの人生を送らせたい両親の想いに対する子供の想い。。子供の人格否定を無意識にしている親のエゴ。。
「家族の絆、みたいなもの。絶対的な愛情。親なら子どものことを一番に考えているはずだという妄信」
親の立場としても子供の立場としても考えさせられる。。


異形者の独白は、、とても胸が詰まる思いで読みました。。親を恨みながら恨みきれない想い。。手を差し伸べてもらえない子供たちの気持ち。。積年の恨みが感じられる根深い闇。。罪悪感なく殺させる両親への労り。。

 

母親が異形の子供と向き合う姿こそ、、子を持つ親の理想形なのではないだろうか?子供だった頃の自分と親になった自分の考え方の変化は誰でもあり得る。。だけど子供の気持ちを真摯に受け止めてあげる事。。どんな小さなことでも。。それは子供だった頃の自分の願いだったはずと。。わたしはそういう思いで子育てをしてます。

 

非日常と日常が紙一重な世界。。誰が人間に向いてないのか?読み応えのある一冊でした。。

『ねじまき片思い』 柚木 麻子

 

ねじまき片想い (創元推理文庫)

ねじまき片想い (創元推理文庫)

 

おすすめ ★★★☆☆

 

【内容紹介】

豊かな想像力を武器に老舗おもちゃ会社で敏腕プランナーとして働く富田宝子。彼女は取引先のデザイナー西島に5年も片想いをしており、気持ちを伝えられずにいる。彼に次々と降りかかる災難を、持ち前の機転とおもちゃを駆使し解決していくが、西島は宝子の奮闘にまったく気がつかず?!自分の心にねじを巻けるのは、自分だけ。宝子が自分の心を解放したとき彼女を待つ未来は―。

 

【感想】

片思いのお相手の周辺で巻き起こるトラブルを陰で解決し、未然に防ぐ「片思い探偵」笑。。恋は消極的だけど、、探偵業は積極的。。
途中、少しパターン化していて、少々退屈さを感じた。。片思いをしている本当の自分の気持ちに気づいた宝子の目覚めの時からの急展開はちと笑いました(わたしも何だか目覚めた❀.(*´▽`*)❀.)。。恋の呪縛。。長かったね。。

 

「おくさん。生きていてよかった、とはこのことだ。その柔らかでふっくらとした感触の四文字を宝子は心の中で何度も転がした。」

好きな人から「良い奥さんになりそう」と声をかけられた宝子。恋に恋する宝子の可愛らしさを感じます。。

『望郷』 湊 かなえ

 

望郷 (文春文庫)

望郷 (文春文庫)

 

おすすめ ★★★☆☆

【感想】

瀬戸内海の島に暮らす人々の6つの短編集。
とても鬱陶とした島民の人間模様に閉塞感を感じられ、息苦しかった。どのお話も恨み、陰鬱、妬み、諦めが閉鎖的な世界で濃厚に渦巻いてて、、早く脱出したいのに、窮屈さに締め付けられ、、読み進めるスピードを落とす。。島からなかなか抜け出せない💦💦この気持ちが、島にとどまることしかできない人の想いに似ているのかも。。

『望郷』というタイトル通り、、島への想いが強いからこその物語だったと思います。。作者の故郷がモデルとされた島ということで、更に生々しさを感じられる一冊でした。。美しい瀬戸内海に浮かぶ島の景色、風土、海鮮をいつか味わいたいと夢見ているわたしには、、島民たちの現実に少なからず衝撃を受けました。。

湊かなえさんは『告白』『境遇』で断念しました。。お久しぶりに読みましたが、短編でちょうど良いかと思います。。どの話も長編だったら、体力奪われそうです。。😖📖💦