みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『逆ソクラテス』 伊坂 幸太郎

 

逆ソクラテス (集英社文芸単行本)

逆ソクラテス (集英社文芸単行本)

 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

敵は、先入観。
世界をひっくり返せ!

逆転劇なるか!? カンニングから始まったその作戦は、クラスメイトを巻き込み、思いもよらぬ結末を迎える――「逆ソクラテス」
足の速さだけが正義……ではない? 運動音痴の少年は、運動会のリレー選手にくじ引きで選ばれてしまうが――「スロウではない」
最後のミニバス大会。五人は、あと一歩のところで、“敵”に負けてしまった。アンハッピー。でも、戦いはまだ続いているかも――「アンスポーツマンライク」
ほか、「非オプティマス」「逆ワシントン」――書き下ろしを含む、無上の短編全5編を収録。

【感想】

伊坂幸太郎さん、4年ぶりに読みました。

デビューしてから20年目の短編集。

主人公は小学生の子供たち。敵は先入観!どうひっくり返したのか、楽しみ!

 

決めつける教師の先入観を利用して、友達を助ける転校生のお話(「逆ソクラテス」)

「君はこうだ!」と決めつけられたら、こう答えよう。「僕は、そうは、思わない」なんてシンプルで力強い言葉なんだろう。

 

小学校の頃、同じバスケットチームの仲間5人。最後の試合、残り1分で惜しくも負ける。高校生となり、再会する5人。そこで事件発生...。過去の失敗に強い後悔を抱きながら、それぞれの高校生活を過ごす男子高校生たちの再生の物語(「アンスポーツマンライク」)

思いもよらず、感動しました。

 

ラストの「逆ワシントン」に登場する真面目で正直者が勝つという信念を持つお母さんが好きです。母は強し!最高‼︎この話に大人になったバスケの男子高校生も登場して..ポッと心が温まる。

伊坂さんらしいユーモアな言葉にクスっとしたり、率直な子供の発想、言葉、ひたむきさには胸打つ場面も。。親目線で読むと、反省してしまいます。先入観、思い込み、それだけで子供たちに不快な思いをさせていることはあると思う。息子にかけるお父さんの言葉にわたしは少し救われる。

「親になったら、お父さんたちの良かった部分は真似して、駄目だった部分はやめるんだぞ。そうすれば、ほら、だんだん完成形に近づいていくんじゃないか?」

 
小学生時代を思い出すことはあまりないけど、その頃に影響を与えてくれる大人たちが全て正解だと思い込む時期がある。。良い面も悪い面も大人になった自分の中にほんの数滴でも残っていて、時折どちらも出してしまう。。小さな世界で奮闘していた小学生時代を懐かしみながら読むと、爽快感もあり、しんみり切なさも感じられる。