みみの無趣味な故に・・・

読書、時々映画、絵画鑑賞の感想を書いてます。

『活版印刷 三日月堂 海からの手紙』 ほしお さなえ

 

おすすめ ★★★★★

【内容紹介】

小さな活版印刷所「三日月堂」には、今日も悩みを抱えたお客がやってくる。物静かな店主・弓子が活字を拾い、丁寧に刷り上げるのは、誰かの忘れていた記憶や、言えなかった想い……。活字と言葉の温かみに、優しい涙が流れる感動作。

【感想】

シリーズ第二弾。またホロッとさせられるかなぁ。。

前作の感想→『活版印刷三日月堂 星たちの栞』 ほしお さなえ - みみの無趣味な故に・・・

 

「ちょうちょうの朗読会」朗読講座の生徒たちが朗読会に参加。図書館司書の小穂は仲間たち4人とあまんきみこさんの「白いぼうし」に挑戦。それぞれの声を送り出す初の朗読会。プログラムを活版印刷で作ることに...。

 

「あわゆきのあと」小学五年生の広太は担任から教わった活版印刷が気になり、三日月堂へ。壁一面木の棚に並ぶ活字に心奪われる。。父から「実は...広太には、お姉さんがいたんだ」と告げられ、生まれて三日で亡くなった姉「あわゆき」の存在を知り、死というものは?生きるということは?と思い悩む...。

 

「海からの手紙」恋人と別れた昌代はいとこの子供から白い名刺をもらった時に「活版印刷」という言葉に惹かれ、三日月堂に訪れる。活字や印刷機に触れ、大学で学んだ銅版画を思い起こす。弓子と銅版画と活版印刷を組み合わせた豆本を制作する。弓子との共同制作を進める内に、意外な人の過去と自分の過去を振り返る...。

 

「我らの西部劇」心臓発作を起こし、一命を取り留めたが、会社復帰はできず、無職に。妻と子供二人を連れ、実家で暮らすことに。懐かしい町を歩くと古本屋さんで豆本を手にする。そこには、子供の頃、ライターだった父と訪れた三日月堂の名前が。。かつての父子の確執と今の息子との葛藤。活版印刷に残された父の原稿に知られざる父の素顔が...。

 

どの話も、温かいものが込み上がり、涙が溢れる。。引っ込み思案の小穂が朗読会で役の気持ちを汲み取れず苦悩し、葛藤しながら、自分らしさ、自分でいいんだと思えた時、自分に重ね合わせ、スッと心が軽くなる。たった3日しか生きられなかった姉の存在に「生と死」への不安に駆られる広太の家族への優しさに涙したなぁ。精一杯生きた命を忘れたくないね。。三日月堂の懐かしい雰囲気や活字、印刷機の音、インクの匂いが過去に回帰して、忘れていたほろ苦い記憶が蘇り、活字の温かい言葉に心解され、過去の自分と決別し、新たな自分と前へ進んでいく。。

 

「海からの手紙」の一文に「もう元に戻れない。生きることはいつも一方通行だ」と書かれている。この言葉が心に染みる。過去の自分と今の自分でひとつのことに取り組む事で今までの価値観や生き方がガラリと変わる瞬間がある。

世界がウィルス感染防止の為、外出自粛をしている今現在、日々変わりゆく社会から離れ、家で過ごす時間。。今までの生活習慣が変わり、価値観や意識が大きく変わってきた。不便な生活を強いられた今だからこそ、古き良き時代に触れ、新しい生き方を見出していく。。三日月堂に訪れるとこんな気持ちになるのかもしれない。。