みみの無趣味な故に・・・

読書、時々映画、絵画鑑賞の感想を書いてます。

『朝が来るまでそばにいる』 彩瀬 まる

 

朝が来るまでそばにいる(新潮文庫)

朝が来るまでそばにいる(新潮文庫)

  • 作者:彩瀬まる
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/02/14
  • メディア: Kindle版
 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

火葬したはずの妻が家にいた。「体がなくなったって、私はあなたの奥さんだから」。生前と同じように振る舞う彼女との、本当の別れが来る前に、俺は果たせなかった新婚旅行に向かった(「ゆびのいと」)。屋上から落ちたのに、なぜ私は消えなかったのだろう。早く消えたい。女子トイレに潜む、あの子みたいになる前に(「かいぶつの名前」)。生も死も、夢も現も飛び越えて、こころを救う物語。

 

【感想】

幻想から再生へ。。

この世のものではない何者かが現実の世界で弱りゆく者たちの心にそっと忍び寄る。。心の闇が色濃くなり、生と死の境界が曖昧になり、恐怖と慈悲が入り混じる感覚になる。。彩瀬作品は不安を掻き立てられながらも引き寄せられる。

 

「ゆびのいと」急死した妻と暮らす夫。新婚旅行先で、妻が鬼と化し、夫を引きずりこんでいく。(死んでもなお、夫と繋がりを望む妻。強欲な美しき妻を愛した夫。「ずっといたい。離れたくない」愛が深いのか、欲が深いのか。。これは怖かった)

「眼が開くとき」子供の頃に転校してきた男子・暁を食らう夢を見る瑠璃。写真家となった瑠璃は暁と再会し、彼の美しさを最大限に引き出す。彼を貪り食らう欲求を満たす瑠璃。(こちらは異色な話だけど、面白かった。芸術家の狂気な世界を垣間見た。天才の感性、欲望は飽きるまで貪欲に凡人の輝きを吸い取るんだろう)

「よるのふち」母を事故で失った幼い兄弟。寂しさで泣き喚く弟と泣くことができない兄。夜中に懐かしいハンドクリームの香り。弟の頭を白い手が...。(これは切なかった。小学生の兄が懸命に寂しさを我慢してる姿にも子育てがうまく行かない父のやるせなさも。死んだ母も幼い我が子を残して、気が気ではないと思う。母の残り香を忘れないでほしいなぁ)

「かいぶつの名前」は『シックスセンス』のような話。。死んだのに消えない。消えたいから死んだのに消えない。苦しみから解き放たれたいから、死を選んだのに、本当の苦しみに襲われる死者。グロい描写があるけど、目を離してはいけないような気がする。。どんなに苦しくても乗り越えて生きることを選びたい。

 

未練や後悔、心の醜さは誰でもあると思う。。心の闇が広がり、淋しく震える夜。。朝が来るまでそばに誰かがいる。。人ではなく異世界の者がそっと見守ってくれてるかも。。

心の闇に光が当たる瞬間に安心感が広がり、ほんわか温かみを感じる物語でした。