みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『ペンギン鉄道 なくしもの係』 名取 佐和子

ペンギン鉄道なくしもの係 *1

作者: 名取佐和子
出版社/メーカー: 幻冬舎
発売日: 2014/06/10
メディア: 文庫

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おすすめ ★★★★☆ 

【内容紹介】

電車での忘れ物を保管する遺失物保管所、通称・なくしもの係。そこにいるのはイケメン駅員となぜかペンギン。不思議なコンビに驚きつつも、訪れた人はなくしものとともに、自分の中に眠る忘れかけていた大事な気持ちを発見していく…。ペンギンの愛らしい様子に癒されながら、最後には前向きに生きる後押しをくれるハートウォーミング小説。

【感想】

ペンギン鉄道?想像していたのはぶたぶたさん的な?(『ぶたぶたの甘いもの』 矢崎 存美 - みみの無趣味な故に・・・参照)ペンギンが勤めるなくしもの係の話だと思ったら、本物のペンギンがペタペタ歩きながら、電車に乗ったり降りたり、ただそこで暮らしてるだけ。。本来なら不思議を通り越して、異質な世界だよ笑。ペンギン鉄道では日常に溶け込んだあたりまえの光景なのです。

物をなくした人達となくしもの係の守保くんとペンギンの温かいほのぼのとした交流と思いきや、愛猫の骨壺を持ち歩く失恋を引きずる女性の喪失感。現実世界に居場所が持てないひきこもり高校生の閉塞感。夫に嘘の妊娠を告げる妻の罪悪感。と、それぞれの抱える心の不安がペンギンを取り巻く不思議な出会いで向き合い、前向きになる爽やかで温かい話でした。。と、三話までそんな感じでさらりと読了。

ここからややネタバレしちゃうかも。。

最終話は途中からボロボロ泣きながら読んだわ。。苦しかった。。今まで置き去りになってた不思議なペンギンの存在が明らかになります。スッキリすると思います。最後まで読むのが断然おすすめです。

ここからは私事になってしまいますが、

そこにまつわるエピソードにわたしの心の奥にしまい込んでた記憶がどっさり出てきて、涙止まらなかった。。大袈裟な涙なのかもしれないけど、、息子を失う父親の心情にわたしの父を重ねてしまい、母親のように感情を表に出さない父親の奥深い悲しみに触れ、寂しさ、後悔、責任がとても重かったのだろうと、胸が痛くなりました。親の生きる力を与えるのも息子の忘形見と思い出なのだと。。ペンギンに込められた想いに大泣きしてしまった。。涙脆いわ〜。

*1:幻冬舎文庫