みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『草花たちの静かな誓い』 宮本 輝

 

草花たちの静かな誓い

草花たちの静かな誓い

 

おすすめ  ★★★☆☆

【内容紹介】

ロサンゼルス在住の叔母の、突然の訃報。弦矢は謎を追い始める―。叔母・菊枝の死を知り、甥の弦矢が渡米すると、巨額な遺産の相続人として彼が指名されていた。また、幼くして病死したはずの叔母の娘が、実は死んだのではなく、ずっと行方不明なのだと知らされる。なぜ叔母はそのことを黙っていたのか。娘はどこにいるのか。

【感想】

叔母の大豪邸に納骨を済ませるまで、しばらく住む弦也。。一人で大豪邸に住み、莫大な遺産の目録を渡され、病死したと思っていた従姉妹が生きてるかも?探さないと?どうやって?と、、混乱しますよね。。でも意外と冷静な弦也。。叔母の作ったスープの数々を楽しんだり。。何種類の花が彩る庭園で草花たちとおしゃべりしたり。。自分と対話して独り言が多くなったり。。叔母が誰にも悟られないように隠した秘密を見つけては、謎を深めたり。。叔母と親交してきた人々と出会い、叔母の思い出を振り返り。。カフェで恋心を抱いたり。。そんな優雅な暮らしを満喫してる弦也ですが頭の中を大きく占めてるのはもちろん従姉妹の行方。。これが大きな目的。。一人では探せるわけがない。。雇った敏腕私立探偵・ニコ。。仕事が抜群に早い男。。ニコの登場からゆったりした話が大きく動き出す。

 

ネタバレします。

真相解明へ。。やるせなかったなぁ。。子を守り抜く母親の強い想いがさせた行動は、とても悲しい。。アメリカで子供の行方不明の年間件数の多さ。子供を一人にさせてはいけないというルールがあるアメリカで、なぜ菊枝が子供を一人にさせたのか?序盤から意図的にした事だと気づく。。二十七年間、子を懸命に探すフリをしながら、遠くの子供を見守ること。。夫の娘への異常行為。。小さな疑惑から母、妻、女の勘は鋭く、娘の心身を案ずる。。夫を問い詰めることはできない。。娘を父親から守るための苦肉の策とはいえ、辛い決断。。夫への愛も深く、娘への愛から嫉妬へ変化する自分への恐怖。。苦しみはとても辛い。。異国の地だからこその話なんだろうけど、他に対策はなかったのか悔やまれる。。経済的に豊かで、恵まれた環境でも母の一転する孤独さをとても感じる話でした。。

 

菊枝が作り続けたスープ。。どんな想いだったんだろう。。花園の草花たちの声を聞きながら、キクエのスープを食べたいなぁ。。できることなら、レシピもほしい。。