みみの無趣味な故に・・・

読書、時々映画、絵画鑑賞の感想を書いてます。

『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』 町田 そのこ

 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

すり鉢状の小さな街で、理不尽の中でも懸命に成長する少年少女を瑞々しく描いた表題作。その他4編を収録した、どんな場所でも生きると決めた人々の強さをしなやかに描き出す5編の連作短編集。

【感想】

五編の冒頭の一文が心を掴む。

 

前歯が取れたさっちゃんは一緒に住んでる男に笑われる。ほんの小さなきっかけで思い起される一生に一度の恋(「カメルーンの青い鳥」)

舌先でなぞる空間。大好きなあの人との再会。歯が埋められても、埋められないものがあるよね...ほろ苦いわ。これがデビュー作!秀逸なラストに驚き!

 

「夏休みに入る前、近松晴子が孵化した」

祖母に育てられた体も気も小さい晴子。祖母を馬鹿にする同級生に激怒した晴子。母子家庭で育った啓太はある目的で新聞配達のバイトを始める。事情を抱えた二人が理不尽な中でも懸命に生きる(「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」)

片親に育てられた啓太と晴子。啓太の眩しさに、晴子の強さに惹かれ合い、寄り添う二人の健気な気持ちに胸打たれます。啓太の晴子への感性にときめく💕

 

「今日は私の誕生日で、とてもいいお天気の日曜日だから、死ぬにはぴったりの日だなと思った」

流産と死産をし、子供が産めない体となった桜子に暴力を振るう夫。死ぬつもりで出かけた桜子。人生を揺るがす時に必ず出会う男とその日も再会する。(「海になる」)

ラストの物語は苦痛と息苦しさと緊迫感が伴う。でも一番心に残るお話でした。苦しみを抱えながら生きる意味。死の覚悟を持っても、死なない運命。男が桜子に見出す生の象徴に衝撃を与えられたように、わたしも衝撃を受けました。

 

他の2編もとても良かった。それぞれの境遇で喪失感、虚無感、閉塞感、罪悪感を抱えた人々が懸命にあがきながら生きていく。抗い、諦め、絶望を経て、強い決意を持ち、一歩を踏み出す物語。

ラストの物語までへの構成の巧みさと読ませる筆力に感嘆❣️さっちゃんが時折出てくると、ホッとするわ〜(*˘ ˘*)