みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『高瀬庄左衛門御留書』 佐原 浩太朗

 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

神山藩で、郡方を務める高瀬庄左衛門。50歳を前にして妻を亡くし、さらに息子をも事故で失い、ただ倹しく老いてゆく身。残された嫁の志穂とともに、手慰みに絵を描きながら、寂寥と悔恨の中に生きていた。しかしゆっくりと確実に、藩の政争の嵐が庄左衛門を襲う。

【感想】

妻と息子を失った庄左衛門が寂しさや後悔の中でも静かに隠居を過ごす姿が父と重なってしまいました。ささやかな趣味を楽しんだり、慣れない家事に一苦労したり。。季節の移ろいを庭先で見つめる姿など、、年は違いますが、父の事が頭に浮かび、じんわりと心に染み込み、少し切ない気持ちになるのです。

息子の同級で神童だった弦之助への嫉妬、子弟関係となる嫁・志穂への戸惑い、巻き込まれる政争、旧友との再会、息子の死の真相と、平穏に過ごしたい庄左衛門は様々な展開に心を揺さぶられていくのですが、一貫として上品な文章から、静けさが漂い、庄左衛門の人柄、立ち居振る舞い、心の内まで全てが美しく、物語の躍動さも美しく感じられてしまう。読み手のわたしも静観してしまいます笑。

家族を失った庄左衛門が前に進んで生きようとしたのは、志穂の存在が大きい。趣味の絵で交流を重ねる庄左衛門と志穂。舅と嫁、子弟関係を超えた感情が二人を戸惑わせていくのです。微妙な距離感や色めく空気が生々しい(父と義姉を思い浮かべてしまった... (ヾノ´°ω°)イカンイカン..環境は一緒だけど、こんな空気感はない笑)

庄左衛門に仕える余吾平と半次や、父のように慕う弦之助や志穂の弟・俊次郎は静かな庄左衛門の暮らしを賑やかにしてくれる。人の別れもあれば、新たな出会いもある。庄左衛門のように温かい空気が常に流れ、素敵な人たちに囲まれるような人生を送りたい。

神山藩シリーズ第一弾だそうなので、第二弾も楽しみにしてます。