みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『ねじまき片思い』 柚木 麻子

 

ねじまき片想い (創元推理文庫)

ねじまき片想い (創元推理文庫)

 

おすすめ ★★★☆☆

 

【内容紹介】

豊かな想像力を武器に老舗おもちゃ会社で敏腕プランナーとして働く富田宝子。彼女は取引先のデザイナー西島に5年も片想いをしており、気持ちを伝えられずにいる。彼に次々と降りかかる災難を、持ち前の機転とおもちゃを駆使し解決していくが、西島は宝子の奮闘にまったく気がつかず?!自分の心にねじを巻けるのは、自分だけ。宝子が自分の心を解放したとき彼女を待つ未来は―。

 

【感想】

片思いのお相手の周辺で巻き起こるトラブルを陰で解決し、未然に防ぐ「片思い探偵」笑。。恋は消極的だけど、、探偵業は積極的。。
途中、少しパターン化していて、少々退屈さを感じた。。片思いをしている本当の自分の気持ちに気づいた宝子の目覚めの時からの急展開はちと笑いました(わたしも何だか目覚めた❀.(*´▽`*)❀.)。。恋の呪縛。。長かったね。。

 

「おくさん。生きていてよかった、とはこのことだ。その柔らかでふっくらとした感触の四文字を宝子は心の中で何度も転がした。」

好きな人から「良い奥さんになりそう」と声をかけられた宝子。恋に恋する宝子の可愛らしさを感じます。。

『望郷』 湊 かなえ

 

望郷 (文春文庫)

望郷 (文春文庫)

 

おすすめ ★★★☆☆

【感想】

瀬戸内海の島に暮らす人々の6つの短編集。
とても鬱陶とした島民の人間模様に閉塞感を感じられ、息苦しかった。どのお話も恨み、陰鬱、妬み、諦めが閉鎖的な世界で濃厚に渦巻いてて、、早く脱出したいのに、窮屈さに締め付けられ、、読み進めるスピードを落とす。。島からなかなか抜け出せない💦💦この気持ちが、島にとどまることしかできない人の想いに似ているのかも。。

『望郷』というタイトル通り、、島への想いが強いからこその物語だったと思います。。作者の故郷がモデルとされた島ということで、更に生々しさを感じられる一冊でした。。美しい瀬戸内海に浮かぶ島の景色、風土、海鮮をいつか味わいたいと夢見ているわたしには、、島民たちの現実に少なからず衝撃を受けました。。

湊かなえさんは『告白』『境遇』で断念しました。。お久しぶりに読みましたが、短編でちょうど良いかと思います。。どの話も長編だったら、体力奪われそうです。。😖📖💦

『西洋菓子店プティ・フール』 千早 茜

 

西洋菓子店プティ・フール

西洋菓子店プティ・フール

 

おすすめ ★★★☆☆

 

【感想】
頑固なシェフ・じいちゃんと孫娘のパティシエ・亜樹が営む下町洋菓子店。。甘いスイーツの香りが漂う店内に訪れる少しほろ苦い6つの連作短編集。

 

亜樹の洋菓子へのまっすぐな想いと頑なさに戸惑う婚約者(弱気な理解者)。。亜樹の姿勢に憧れる元職場の後輩(迷える子羊)。。その後輩に恋をするネイリスト(ミナがいちばん好き)。。近所に住む心に闇を持つ主婦(この話だけ、、異質。苦味が強め)。。亜樹を取り巻く人々の心の苦味をほんのり溶かす甘い洋菓子たち。


元職場の後輩・スミくんの物語。彼視点の女性2人の印象がスミくんの心をうまく表してる。。ネイリスト・ミナはお洒落大好きで可愛い今時のキラキラ女子。彼女の恋心を知りつつ、友達として側にいる。亜樹は化粧もせず、洋菓子の事で頭いっぱいのキリッと凛とした女性。しっかりした女性とふわふわした女子の間でケーキの修行に励む。。ふわふわ女子の印象を残したまま、、ミナの物語を読むと、印象がガラリと変わる。。ネイルにかけてのプロ意識。仕事への隠れた情熱をもち、とてもしっかりとして芯のある女性。スミくんの前では可愛いくて、ふんわりな女子になるのね。。切ない片思いが亜樹への好奇心に変わり、飾らない女性の自然美に心打たれる。亜樹とは世界が違うけど、仕事へのこだわりは共通する点がある。。大きな違いは、相手の心情に寄り添って、好きな人を見守る女性。。一方通行の恋だけど、前向きなミナがとても可愛らしい。。


ラストの頑なな孫娘の心を溶かすじいちゃん、ばあちゃんのお話が亜樹の明るい将来を思わせてくれて良かった。

 

 

 

『あまからカルテット』 柚木 麻子

 

あまからカルテット (文春文庫)

あまからカルテット (文春文庫)

 

おすすめ ★★★★☆

 

【内容紹介】

女子校時代からの仲良し四人組。アラサーに迫り来る恋や仕事の荒波を、稲荷寿司やおせちなど料理をヒントに無事解決できるのか――彼女たちの勇気と友情があなたに元気を贈る! 危うく美しい29歳たちを描く傑作ラブ・コメディ

 

【感想】

中学の頃からの女友達4人組。。ピアノ講師・咲子。月刊誌の編集者・薫子。デパートの美容部員・満里子。専業主婦・由香子と、、環境も性格も全く違う4人。
恋愛、仕事、結婚、それぞれの困難を4人で助け合う友情物語。。頼ること、甘えることに不慣れな4人だからこその結束力は、、女性的な芯の強さを感じられる。。女の友情はほんの些細なことでも壊れやすいけど、この4人からは微塵にも感じられないところがとてもうらやましくもあり、、とても微笑ましくもあり、、なんといっても出てくるお料理がおいしい一冊でした。

『六番目の小夜子』 恩田 陸

 

六番目の小夜子 (新潮文庫)

六番目の小夜子 (新潮文庫)

 

おすすめ ★★★☆☆

 

【内容紹介】

津村沙世子――とある地方の高校にやってきた、美しく謎めいた転校生。高校には十数年間にわたり、奇妙なゲームが受け継がれていた。三年に一度、サヨコと呼ばれる生徒が、見えざる手によって選ばれるのだ。そして今年は、「六番目のサヨコ」が誕生する年だった。学園生活、友情、恋愛。やがては失われる青春の輝きを美しい水晶に封じ込め、漆黒の恐怖で包みこんだ、伝説のデビュー作。

 

恩田陸の世界に浸りたくて、大好きな理瀬シリーズ『麦の海に沈む果実』を読もうと思ったら、、本棚になかった(誰かにあげちゃったみたい。買わねば。)じゃ、続編の『黄昏の百合の骨』と思ったけど、なぜか手が小夜子伝説へ。。再読。。

懐かしい不思議な学園ミステリー。。淡い恋愛もあり、恩田作品には欠かせない謎の少女、終始不穏の空気が漂う緊張感。。

成績優秀の人気者・関根秋、分析力が意外にある明るい秋の親友・唐沢由紀夫、真面目でしっかり者の花宮雅子、謎の美少女転校生・津村沙世子。。

今年選ばれたサヨコは誰か?サヨコ伝説の裏には何が隠されているのか?

各々の思いを巡らすサヨコの謎。。

 

恩田ワールドがここから始まったと思うと、、最初に読んだ時より、楽しめたかなぁ。。

 

『水銀灯が消えるまで』 東 直子

 

水銀灯が消えるまで (集英社文庫)

水銀灯が消えるまで (集英社文庫)

 


おすすめ ★★★★☆

 

【感想】

歌人でもある東さんの初小説集。初めての作家さん。。とても楽しめました。

 

人生に疲れてしまったわけありの人々がふと足を向ける「コキリコ・ピクニックランド」 寂れた遊園地で出会う不思議な全6話の連作短編集。

 

デビュー作「長崎くんの指」は物置に住む女が長崎くんの指に恋をするお話。物置女も気になるけど、、綺麗な手の持ち主・長崎くんがとっても気になる。最後に「長崎くんの今」で長崎くん再登場。。とても不安定で曖昧でなんとなくな長崎くん。。手が見たい。。

 

突然、家の前で行き倒れていた記憶喪失の女性と暮らすお話「道ばたさん」は楽しかった。不審者との暮らしを楽しむ母に違和感を持つイガイガモヤモヤの中学生・麻美の心の声が可愛い。。「うかうかしていた。うかうか道ばたさんを好きになってしまった」  笑。

 

しんみりしたのが「アマレット

父と母と田舎を嫌う美人のマリアさん。都会暮らしに疲れ、遊園地で勤める。。この話が一番現実的で、切なくて、美しい。


居場所のない決して幸せとは言えない人々が通過する遊園地。。とても怖い内容なのに、ふんわりした言葉の表現と可笑しみのあるユーモアの数々が深刻さを感じさせない。まさにトーヒコー本。。この不思議感、、好きかも。。

『四十路越え!』 湯山 玲子

 

四十路越え! (角川文庫)

四十路越え! (角川文庫)

 

 おすすめ ★★★☆☆

 

【内容紹介】

四十路、それは人生の折り返し地点。変えたい自分と変えたくない自分とがせめぎ合う、のっぴきならない状況だ。褒めてくれる人は激減、腰を抜かすような老化の兆しが現れ、経験のない仕事のトラブルが。だが、四十歳は人生大仕切り直しのエポックでもある!若い時に体得した「自分らしさ」はもうイタい。人から選ばれなくても結構、「規格外」の気概で生きるしかない。第二のエンジンをふかせ、人生の突破口がここにある!!

 

【感想】

四十路の恋愛、セックス、健康、美容、ファッション、仕事を赤裸々に語り、攻撃的に謳歌するパワーに圧倒された。前半部分は過激ですごい。。

男性の性欲中心恋愛、女性の恋愛夢見がち、性事情のタブー化、「恋愛体質女」へのダメ出し。。バッサリハッキリ物申す。。ふむ。すごい。

健康のヨガについてはかなり共感した。「精神的な辛さ、落ち込みを確実に良い方向に向かわせる力」わたしも実感してます。

ファッションのイタさと外見と内面の落差の損は、、頷けた。人の第一印象はどうしても見た目。。外見がかっこいいのに中身がない残念な女性が溢れてる中、外見が無難なのに、内面が実にオモロイ女(作者はオモロイ女になれと言ってます)は素通りしてしまう悲しさがある。。アピール力、大事?

最後の仕事は、とても参考になりました。起業のススメは、なかなか勇気がいるけど、経験値の高い女性は知識を得て積極的に取り組むのは賛成。。社会から退いてしまった女性へのエールにもなると思います。焦りも多少感じたけど笑。