みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『骸骨ビルの庭』 宮本 輝

 

骸骨ビルの庭(上) (講談社文庫)

骸骨ビルの庭(上) (講談社文庫)

 

 

骸骨ビルの庭(下) (講談社文庫)

骸骨ビルの庭(下) (講談社文庫)

 

 おすすめ ★☆

内容(「BOOK」データベースより)

大阪・十三に戦前からある通称「骸骨ビル」。戦後の混乱期に住み着いて、オーナーの阿部轍正と茂木泰造に育てられた孤児たちを立ち退かせるために三人目の担当者として送り出まれた八木沢省三郎は、一筋縄ではいかなそうに見える彼らの話に耳を傾けるうちに、困難だったであろう日々を思い描くようになる。

 

 

八木沢省三郎(ヤギショウさん)が骸骨ビルに着いてから、出てくる登場人物を把握するのに、ちと困難した。。。メモった。。フルネームとニックネームがごちゃごちゃし出す。。(おバカさんだからであって、、理解できる人は理解できるであろう。。人名覚えるのに苦手です)


骸骨ビル所有者である故・阿部轍正(パパちゃん)と茂木泰造(ママちゃん?)は戦争孤児や親に棄てられた子供をこのビルに住まわせ、立派な大人になる事を願いながら、、苦労を苦労と思わず(でも凄い過酷な事)、、父となり母となり、、育て上げる。。

ヤギショウさん、、個性豊かな住人達に色々な事を教えてもらいながら、、毎日、読書、お料理、畑仕事と、、、のんびり暮らしてる(立ち退き期限あり。大丈夫?)
ヤギショウさんは、、彼らとのふれあいから、、「人間と人間の永遠性」に気づく。。
親という在り方。。師という存在。。
茂木泰造さんが、、孤児だった子供たちに何を伝えたかったか、、どうして骸骨ビルから離れなかったのか。。本当の意味がわかる。。
人の幸せを願える人生って、、一番幸福なんだろうなぁ。。。涙。

やぎしょうさんの恩師の言葉をメモ📝
「わたしに教えてくれる師がいなかった。優れた師を持たない人生には無為な徒労が待っている。なぜなら、絶えず揺れ動く我儘で横着で傲慢な我が心を師とするしかないから」

読み終わり、、、
冒頭のヤギショウさんに送られた茂木泰造さんの訃報の葉書。。を読み返す。。訃報にもかかわらず、、笑顔とVサインの絵文字。。。
わたしも万感胸に迫る想いになりました。。

『君の名は。』


「君の名は。」予告

おすすめ ★★☆☆

 

期待値かなり上げていきましたよ。。

ネットでもSNSでも評価が高いこの映画。
娘は前に観て大絶賛。。絶対観て!と。。

 

主人公の三葉。。嫌々ながら伝統を守り続けていく多感な17歳の女の子。宮水神社の巫女も務める。美人さん。。
もうひとりの主人公・瀧。。都心に住む17歳の普通の男の子。バイト先の女子大生の奥寺先輩に憧れる。。イケメンらしい。。
出会ったことのない二人が、、夢の中で?入れ替わる、、とても不思議な出会い。。なぜこんな事が起きるのか不明なまま、、2人は楽しむ(ここ、、スピード感あって良かった。ダラダラされたら、、寝ちゃいそう)。。。そんな中、彗星が地球に近づき、、幻想的なまばゆい光が2人の空を覆う。。。そこで、、入れ替わりの意味を知る。。。

 

三葉の住む町糸守町の伝統。。「組紐」「口かみ酒」「結び」「かたわれ時」

紐と紐が絡み合い、、紡いでいくこと。。
人、時、も同じで、、結び繋がっている。。
体内に取り入れる全ての物が結びに繋がる。。
全ての伝統が鍵となり、、この2人の運命に影響する。。

 

映像と音楽で演出効果絶大な映画でしたね。。背景、風景が写真のようで確かに綺麗。映像美の為に映画館で観るようなもので内容は(普通かな)演出効果のおかげで飽きさせない。

瀧くんを演じる神木隆之介。。三葉が瀧くんになってる時の、演技がめちゃ可愛い。。声を高くするのではなく、地声でまさに女子。。ここは、、かなりキュンキュンしました。

 

「破滅からの建設」とはこういうことなのかな。。スピリチュアルな事って、、肌で感じる事なのか、、目の当たりする事なのか、、よくわからないけど、、幻想的空間にいる瞬間、、神聖な事を信じられる自分の体感なのかも。。。わたしにとって、、大自然はまさにその世界。。足を踏み入れる事への恐怖と願望が入り混じる、、不思議な気持ちに。。。そんな事を鑑賞後、、思いました。。

娘と感想を語り合う。。娘のツボ。。わたしと一緒。。「神木くん、女子力高いね」とか、おばあちゃんの「結び」の語りが感動したと聞き、、うれしい。。

「不謹慎だけど、、破滅や終末って、、幻想的で神秘的に描きたくなるのかな。。目を見張る映像がそう感じさせるんだよね」と。。わたしの感想を述べたら、、娘が「死に際って走馬灯のように頭の中で駆け巡るんでしょ?綺麗なイメージじゃない?」って。。。なるほど。。

 

純愛に関して、、質問したら、、「恋愛とかそんな事より、、行動すると変われる事の方が面白かった」

照れ、、かもしれないけど、、、娘を大きく変えた映画であった事には間違いない。。🎶

『デトロイト美術館の奇跡』 原田 マハ

 

デトロイト美術館の奇跡

デトロイト美術館の奇跡

 

 おすすめ ★☆☆

 

内容(「BOOK」データベースより)

ゴッホセザンヌマティス綺羅星のようなコレクションを誇る美術館が、市の財政難から存続の危機にさらされる。市民の暮らしと前時代の遺物、どちらを選ぶべきか?全米を巻き込んだ論争は、ある男の切なる思いによって変わっていく―。アメリカの美術館で本当に起こった感動の物語。『楽園のカンヴァス』『暗幕のゲルニカ』の系譜を継ぐ珠玉のアート小説。

 

先日、デトロイト美術館展行ってきました。。そこでいただいた(誕生日プレゼントとして)本。

1度目は淡々と読了(気持ちが穏やかな時に読めばよかったのですが、少し不安定な時に読んでしまい、、入り込めなかったのかもと思い再読)。。。淡々な理由は、、読み応えかな。。あっさりした感じに思われます。

自動車工場の溶接工として働いていたフレッド。生前の妻にすすめられてデトロイト美術館(DIA)に訪れる。デトロイトの裕福な一族出のコレクターでもあり、DIAに財政支援をするロバート。DIAのキュレーターの仕事をするジェフリー。この3人が魅了される絵画。『マダム・セザンヌ(画家の夫人)』セザンヌの妻・オルスタンスの肖像画。聖母でも女神でも姫君でも貴婦人でもない。ごく普通のどこにでもいる女性。けれど、、みつめられたい。みつめていたい。寄り添ってもらいたい。そう思わせる女性。。その大切な絵が危機に。デトロイト財政破綻。DIAコレクション売却というニュース。。市民の生活を守りながら、美術館も守りたい。。その思いが奇跡を生み出すことに。。。

芸術作品は、知識がなくても、、観賞していると、視覚と嗅覚と脳が刺激され、心の中で豊かさを与えてくれます。。また行ってみようかなぁ。。。

『望みがかなう人は楽天思考』  佐藤 富雄

 

望みがかなう人は楽天思考 (中経の文庫)

望みがかなう人は楽天思考 (中経の文庫)

 

 

 

内容(「BOOK」データベースより)

人間の体は、どんな願いごとでも、目標を大脳にインプットすればそれを達成する仕組みをもっています。しかし「誰よりも実績をあげたい」といった強い闘争心が必要な目標をもつと、体は確実に蝕まれていきます。自分や仕事、家庭やお金に対する「意識」と「ことば」を棚卸して、幸せに生きるシナリオを描きましょう。

 

医学博士、理学博士、農学博士でもある著者が大脳(考える力)と自律神経系(体を動かす命令器官)の仕組みにより、、人は楽天思考になる。とのこと。。

前半部は楽天的な言葉を口に出す(口グセ理論)事へのすすめ。。「楽しさ、うれしさ、すばらしさ」と明るい表現を口にすると、、からだはその通り反応する。。怒り、恨み、妬み、悲しみを口にすると、、怖いね。。褒め言葉は自分に返ってくるそうです。。みなさん、、褒め合いましょう。。

後半は脳の仕組み(ここからが面白かった)。。ストレスではストレスホルモンであるグルココルチコイド(副腎皮質ホルモンの一種)が分泌される。。まず肝臓に出向き、、膵臓から分泌、、ホルモンを刺激、、分解する。。そうすると肝臓に溜まっているグリコーゲンがブドウ糖になり、血中に次々と現れる。血糖値が上がり、、、、、色々なことが体を巡らせ神経系を刺激し、、ストレス状態に陥る。。。ストレスになる前の体内。。考えただけでストレスが上昇する。。。ノンストレスで生きたいですね。。からだのためにも。。

自律神経というのは、、とても大脳に忠実で全て命令をし、体を動かすそうです。。なるほど。。。勉強したものの悲観的思考になるわたしの脳。。。難しい。。。楽天的に考える努力をします。

 

『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』  万城目 学

 

かのこちゃんとマドレーヌ夫人 (角川文庫)
 

 おすすめ 

 

内容(「BOOK」データベースより)

かのこちゃんは小学1年生の女の子。玄三郎はかのこちゃんの家の年老いた柴犬。マドレーヌ夫人は外国語を話せるアカトラの猫。ゲリラ豪雨が襲ったある日、玄三郎の犬小屋にマドレーヌ夫人が逃げこんできて…。元気なかのこちゃんの活躍、気高いマドレーヌ夫人の冒険、この世の不思議、うれしい出会い、いつか訪れる別れ。誰もが通り過ぎた日々が、キラキラした輝きとともに蘇り、やがて静かな余韻が心の奥底に染みわたる。

 

指しゃぶりのクセが直らないかのこちゃん。クセが直った瞬間、、、ちえがひらかれる。。ちえがひらかれてからのかのこちゃんの成長ぶりがさすが子供。。すごい。。すずちゃんという刎頸の友との出会い。楽しさも悲しさも喜びも不安も色々な感情を知る、、かのこちゃん。。そんな、かのこちゃんのお家で飼われてる柴犬玄三郎さんとゲリラ豪雨(かのこちゃんのお言葉「ゴリラじゃないやつ」。。笑)の起きた日に現れたマドレーヌ夫人(アカトラの猫ちゃん)が夫婦となり。。マドレーヌ夫人の不思議な魔法で、、かのこちゃんの周辺ではあったかい事が巻き起こる。。(わたしの所にもマドレーヌ夫人が現れてほしい)。。。子供の発想や言葉使いがとてもユーモア溢れ、、表現力の豊かさに感心しちゃう。。。前半は笑いありと子供たちのキラキラした世界に惹き込まれ、、後半の様々な別れにポロポロポロポロしちゃいました。。。

『百瀬、こっちを向いて。』  中田  永一

 

百瀬、こっちを向いて。 (祥伝社文庫)

百瀬、こっちを向いて。 (祥伝社文庫)

 

 おすすめ ★☆

 

内容(「BOOK」データベースより)

「人間レベル2」の僕は、教室の中でまるで薄暗い電球のような存在だった。野良猫のような目つきの美少女・百瀬陽が、僕の彼女になるまでは―。しかしその裏には、僕にとって残酷すぎる仕掛けがあった。「こんなに苦しい気持ちは、最初から知らなければよかった…!」恋愛の持つ切なさすべてが込められた、みずみずしい恋愛小説集。

 

わたし、乙一ファンです。別名義作品は読んだ事がありませんでした。ワクワクの中田作品を読んでみました。

百瀬、こっちを向いて。」自称「人間レベル2」の相原くん。人間レベル90以上の憧れの先輩を取り巻く男女間に巻き込まれた人間レベル2。。そこで、恋という感情を知り、悩み、苦しみ、否定する。。

「なみうちぎわ」高校生の時に意識障害となり眠り続け、、大人になり、目を覚ました姫子。。その側で毎日献身的に看病してくれたのは、当時彼女が家庭教師をした小学生の小太郎くん。。これは、、切なかった。。ホロリ(;_;)

「キャベツ畑に彼の声」テープおこしのバイトをしていた久里子。。ミステリー作家の声が憧れの国語教師だった。。これ好き。。💕

「小梅が通る」人間不信になった美少女が化粧でわざと醜い顔にして、、ひっそりと学園生活を送る。同級生に素顔を見られ、妹と嘘をつき、一目惚れされ、姉として奮闘する。。美人ってお得なようで...やっぱりお得な気がする。。

 

恋とは無縁だった主人公達。。恋の芽生え。。ほんわかと懐かしい気持ちにさせられる。。。脇役がいいな。。主人公に後押しをしてくれるお友達。。そのお友達も目立つ事のなく、迷惑かからないように生きていくしかないと思っている子達。それは学生の時に誰もが思う感情で、大人になると自分の居場所を確立して、自信が出てくる。

 

不器用で、自信がなく、隅っこで注目されないように生きてきた人間があったかな気持ちになれる本。

百瀬、こっちを向いて。」の人間レベル90以上の神林先輩と人間レベル2の田辺くんが好きです。

子供だけど、大人に近い年頃の淡い恋心。胸キュン短編集。。お久しぶりです。。

 

 

『ハサミ男』 殊能 将之

 

ハサミ男 (講談社文庫)

ハサミ男 (講談社文庫)

 

 おすすめ ★☆☆

 

内容(「BOOK」データベースより)

美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き立てる猟奇殺人犯「ハサミ男」。三番目の犠牲者を決め、綿密に調べ上げるが、自分の手口を真似て殺された彼女の死体を発見する羽目に陥る。自分以外の人間に、何故彼女を殺す必要があるのか。「ハサミ男」は調査をはじめる。精緻にして大胆な長編ミステリの傑作。

 

通称「ハサミ男」と呼ばれるサイコキラー。ターゲットにしていた被害者が何者かに殺害され、第一発見者となってしまう。。犯行の手口が「ハサミ男」と同じ。。。警察は「ハサミ男」を追う。。「ハサミ男」は真犯人を追う。。心理ミステリー小説。

「普通」とは?「普通」の人の殺意。。明確な理由(動機)が存在する。。世間はその動機に驚きながらも、、納得する。。「普通」じゃなかったのねと。。

ハサミ男」とは?普通に生活をする怪物。。こちらは震撼する。。普通の人々の暮らしの中に静かに控えめに存在する。。魅力的な要素があり、、心の中にスッと入り込む。。怖い。

怪物と真犯人がご対面した頃には、、止まらない。。最後まで、、ハサミ男に魅了されっぱなし。。

巧妙で複雑な展開でした。。でも、、このタイトル、、単純だよね。。ハサミで殺害するから、「ハサミ男」なんて。全てが緻密に描かれてるのに、、この単純性、、実はそこがね。。「普通」のわたしには、、やられた感がありました。

面白かったです。