みみの無趣味な故に・・・

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『闇に香る嘘』 下村 敦史

 

闇に香る嘘 (講談社文庫)

闇に香る嘘 (講談社文庫)

  • 作者:下村敦史
  • 発売日: 2016/09/09
  • メディア: Kindle版
 

おすすめ ★★★★⭐︎

【内容紹介】

村上和久は孫に腎臓を移植しようとするが、検査の結果、適さないことが分かる。和久は兄の竜彦に移植を頼むが、検査さえも頑なに拒絶する兄の態度に違和感を覚える。中国残留孤児の兄が永住帰国をした際、既に失明していた和久は兄の顔を確認していない。27年間、兄だと信じていた男は偽者なのではないか――。全盲の和久が、兄の正体に迫るべく真相を追う。

【感想】

全盲の村上和久は孫への腎臓移植を望むも適さないと診断され、兄の竜彦に頼むが、移植どころか検査さえも拒絶される。竜彦の態度に違和感を覚え、疑念を抱く。27年前、中国残留孤児の兄が永住帰国した際、失明していた和久はその姿を視認できなかったのだ。目の前の男は実の兄なのか?兄だと信じていた男は偽者なのか?兄の正体に迫るべく真相を追う和久に驚愕の真相が待ち受ける。。

全盲の主人公が真相を追うこと。。視覚の情報がないので、その他の五感を頼りにしなければならない。生活をする上でも慎重に集中して行動をしなければ、常に危険が隣り合わせの視力障害者。実の兄が偽物かもしれない、孫の苦しみを解放してあげたい。確執のある娘との絆を取り戻し、孤独から抜け出したい。。その焦りから疑心暗鬼になり、不信に陥り、嘘なのか?真実なのか?不安に駆られる和久の恐怖がゾワっとする怖さでした。

全盲の閉塞感や五感で探る描写がとても丁寧で和久の生活の苦労、失明による家族への理不尽な怒り、妻子との別れ、孤独、残留孤児への否定的な考え、卑屈な性格や言動が繰り返し繰り返し描かれています。正直、気が滅入る、苛立ちやもどかしさも感じました。それこそがこの物語の真相に強烈な効果を与えていると思います。真相解明からは数々の伏線が気持ちよくスッキリ回収。全てがひっくり返される。ラストは見事に光が照らされ、視界が開ける感覚になりました。素晴らしい❣️