おすすめ ★★★★⭐︎
【内容紹介】
大切な人を殺された者は言う。「復讐してやりたい」と。凶悪な事件が起きると人は言う。「同じ目にあわせてやりたい」と。犯罪が増加する一方の日本で、新しい法律が生まれた。目には目を歯には歯を―。この法律は果たして被害者とその家族を救えるのだろうか!?第33回小説推理新人賞受賞。大型新人が世に問う、衝撃のデビュー作!!
【感想】
犯罪抑止のために設けられた「復讐法」...被害者遺族から一名が自らの手で加害者に同じ目を合わせて死刑執行をする報復の権利。裁判の判決後、実刑判決か復讐法かを被害者遺族は選択する。復讐法を選び、執行する「応報執行者」と執行者の保護、監察をする「応報監察官」の双方の葛藤と苦悩が描かれている。
大切な人の命を奪われた人々の深い悲しみ、強い怒り、やるせなさ、自責の念が痛みとして心に襲い掛かる。応報執行者の痛切な心情が身につまされる。「自らの手で殺さなければならない」という恐怖感。永遠に背負わなければいけなくなる重み。この苦しみを思うと耐えられないが、苦しみだけではなく救いになる人もいる。被害者が守りきれなかった命に対する自責の念に強く感情を揺さぶられた。被害者と加害者の境界線がなくなっていく怖さ。
そして国民感情も怖い。他人事の世論や誤報が飛び交い、凶悪犯への制裁という正義論や復讐法反対団体の強い訴え、被害者遺族の個人情報流出、誹謗中傷、嫌がらせと暴徒化していく。
いろいろな立場の感情が入り混じり、自分に投げかけられているようで、苦悩しながら読みました。特にラストの話は虐待を受けた兄妹。幼い妹を殺された兄の復讐法。子供が親に訴えかける言葉の数々。。。辛く重く引きずる...。「赦し」ってなんて難しい事なんだろう。。重いテーマに未だ考えがまとまらないです。