みみの無趣味な故に・・・

読書、時々映画、絵画鑑賞の感想を書いてます。

『夕焼けポスト』 ドリアン 助川

 

夕焼けポスト

夕焼けポスト

 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

日没寸前の川沿いに、不思議なポストがあらわれる。それはあらゆる人間の願いや苦しみを受け止めるポストだった――。ポストの管理人である「私」は悩みを寄せる人々に返事の手紙を書き続ける、まるでなにかの贖罪のように。励ます側である「私」こそ、じつは出口のない苦悩にあえぐ傷だらけの人間だったのだ――。ぎりぎりからの反転、呆然とする耀き。様々な境遇にいる人たちの手紙によって織りなされるこの物語は、世界12言語に翻訳され感動を呼んだ『あん』の著者のもうひとつの原点である。

【感想】

テレビ局に勤めていた「私」は妻と娘を事故で失い、世界そのものが変わってしまった、何のために自分がこの世界にいるのか...と抜け殻のようになり、夜の街を漂う日々。ある日、タゴールという詩人の詩集に心揺さぶられ、「人の国」に旅立ち、祈りの河で少年と出会う。夕焼けポストの管理人となる。様々な境遇の人たちから送られる願いや苦しみの手紙。時には過去の人からも。。送り主に寄り添い、受け止める「私」は十五年間精一杯真摯に送り主に救いの言葉を書き、返事を送る。しかし自分を救うことができない者が綺麗事ばかりを並べ、人を救えるのか?と、再び「人の国」に旅立つ。

 

深刻な悩みを抱え、苦しみ、ネガティブ思考な「私」が「角度を変えて物を観る」という視点から悩み相談に答えていく。。希望や癒しを与える優しい回答を人には伝える事ができても、自分の悩みは奥深く、解決法が見えず、苦しみ彷徨う。人や本に救われることも多いが、最後は自分の力で前を向いていくこと。。どんな苦しみを背負っても、もがきながら生きていくこと。。「私」はとても弱く儚いただの人です。まさに「自分」でした。ものすごく考え考え読みました。短いお話ですが、ゆっくり時間をかけて読みました。感動した、心揺さぶられた、という感情はあまりなく、人は希望と苦悩の中で思考する生き物なんだなぁと改めて感じました。読んだ時の心境によって、印象が変わる物語だと思う。次読むときは、どんな事を感じるかなぁと楽しみでもある一冊。