みみの無趣味な故に・・・

読書、時々映画、絵画鑑賞の感想を書いてます。

『犯罪小説集』 吉田 修一

 

犯罪小説集 (角川文庫)

犯罪小説集 (角川文庫)

 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

田園に続く一本道が分かれるY字路で、1人の少女が消息を絶った。犯人は不明のまま10年の時が過ぎ、少女の祖父の五郎や直前まで一緒にいた紡は罪悪感を抱えたままだった。だが、当初から疑われていた無職の男・豪士の存在が関係者たちを徐々に狂わせていく…。(「青田Y字路」)痴情、ギャンブル、過疎の閉鎖空間、豪奢な生活…幸せな生活を願う人々が陥穽にはまった瞬間の叫びとは?人間の真実を炙り出す小説集。

【感想】

映画『楽園』の原作がこの本と最近知り、映画鑑賞の前に読みました。
実在した犯罪を題材にした短編集。なぜ人は罪を犯してしまうのか?そんな動機で?と悲しい事件のニュースを見るたびに憤りを感じることが多々あります。ただこの本を読んで犯罪を犯す人と犯さない人の心の境界線が実はそこまでかけ離れているわけではない事に驚愕しました。環境、欲望、不安、お金、人間関係、心の防衛、見栄、挫折、虚栄心...あらゆる感情に追い込まれた一歩で道を踏み外すか外さないか。。恐ろしさを感じました。善人と悪人の境界線も曖昧で、人が人を追い込む悪意。その事に気づけない善人たち。。ゾッとします。

 

「青田Y字路」連続少女失踪事件の容疑者と疑惑を持たれる青年の悲しい末路。

(こちらが映画化されたそうです。楽しみ)

 

「曼珠姫午睡」保険金をかけて男性を殺害したかつての同級生。彼女の人生を調べた主婦が追体験しながら色欲の世界に踏み込もうとする。

(普通の主婦が歩まなかった全く違う人生を交差させるって、発想凄い)

 

「百家楽餓鬼」運送会社の御曹司がマカオのカジノにハマり、会社のお金に手を出し破産寸前まで堕ちていく。

(負け知らずの人生の破滅。。バラ色の中の闇って見落としやすそう)

 

「万屋善次郎」集落に住む親の介護で故郷に戻る善次郎。村おこしに力を注ぐも村人から村八分状態に。精神を追い込まれた善次郎は村人を次々と。

(善次郎の飼い犬だけが善次郎の人間性を見抜き、信じ、健気に守る姿に泣きました。)

 

「白球白蛇伝」悪環境な地域で育った人気高校球児。プロ入りし、成績上々、美人記者との結婚と栄光人生に陰りが。引退後の借金を重ね、金の工面で友達を。

(ステータスを下げることって難しいのね。子供がリトルリーグで最後の試合で悔し涙をする場面にどうか未来に光がありますようにと願わざるおえない)

 

過去の実在した事件(予想)を頭に思い浮かべながら読みました。小説だけど実在してると思うと、生々しさを感じられます。