みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『さざなみのよる』 木皿 泉

 

さざなみのよる

さざなみのよる

  • 作者:泉, 木皿
  • 発売日: 2018/04/18
  • メディア: 単行本
 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

小国ナスミ、享年43。その死は湖に落ちた雫の波紋のように家族や友人、知人へと広がり――命のまばゆさを描く感動と祝福の物語!

【感想】

1話...ナスミ自身の死。2話から14話...ナスミの死を受け止める人々の生。死ではなく生を描いた物語でした。
人の死は衝撃的です。特に身内の死は衝撃を受け止める間も無く、日常に流されていく。後からさざなみのように動揺が押し寄せてくる家族の喪失感と日常、関わりのある人々の心の揺れ動きが見事に描かれていて、切なくもなり、温かくもなり、心の奥深くに、じわじわと染み込んでくる。。ナスミの優しさや何気ない言葉ひとつひとつが人々の生き方に影響を与える。生前だけでなく、死後にも...。ナスミの家族の未来の話が好き。

「やどっていたものが去ってゆく。それは、誰のせいでもないように思えた。ただやってきて、去ってゆく....図書館の本を借りて返すような...本は誰のものでもないはずなのに、読むと、その人だけのものになってしまう。いのちがやどる、とはそんな感じなのかなぁ」

生きるって時にはしんどい。みっともないことの連続(わたしはね笑)。。でもいのちを受け継ぎ、必死に生きて、いのちを引き渡す。そう思うと、がんばろうと思える。

最後に1話をもう一度読み返す。病床から見るナスミの風景がなんとも美しい。病室で夫が折り畳み式のお弁当をパタンパタンと音を立ててたたむ仕草。このささやかな光景がナスミにはキラキラと映る。このシーンから温かいものが伝わってくる。「ぽちゃん」...ナスミの波紋は大きく広がり続け、ゆらゆら動き、いつか静かに閉じていく。。わたしも誰かの記憶の中で小さな波紋のような存在になれたら、幸せだなぁ。