文庫 絶望名人カフカ×希望名人ゲーテ: 文豪の名言対決 (草思社文庫)
- 作者: フランツカフカ,ヨハン・ヴォルフガング・フォンゲーテ,頭木弘樹
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2018/06/05
- メディア: 文庫
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おすすめ ★★★★☆
希望に満ちたゲーテと絶望に満ちたカフカ。光と影のような対照的な二人。
ゲーテは明るく、たくましく、自信家、多芸多才、恋愛を楽しみ、作家で成功し、名声を得る。
カフカは繊細で傷つきやすく、痩せていて、自信は皆無、書くこと以外の能力はなく、恋愛は常に苦悩、生涯、無名の作家。
共通項は裕福な家で育ち、法律を学び、文学の道に進み、自分の原稿を焼き、自殺を考え、恋愛するたび(恋多き男たち)に名作が生まれる。。恋人に「フランツは生きる能力がないのです」と言われてしまうカフカが愛読していたのがゲーテの本。亡くなる前に恋人に朗読してもらったのもゲーテの詩。
本編に入る前から、、すでに面白い。。両極端の二人の名言で対話を楽しもう。
ゲーテの言葉の紙の色は白。。カフカの言葉は灰色。。後ろ向きな言葉とうっすらな灰色が合う。。ゲーテの言葉がより眩しく強く感じられる視覚効果あり。
いくつか抜粋↓
ゲーテ「太陽が輝けば、ちりも輝く。」
カフカ「暗闇に戻らなければなりませんでした。太陽に耐えられなかったのです。絶望を感じました。」
いきなり明と暗。。
太陽が輝く限り、汚れやゴミさえ美しく輝く。。ゲーテは寒いのが苦手だそうで春になると「今日は太陽の再生のお祝いをしよう!」と上機嫌になるそうです。。(テンション高いなぁ。。)
ゲーテ「晩に、わたしは千匹のハエをたたき殺した。それなのに早朝、一匹のハエに起こされた。」
カフカ「かわいそうなハエをなぜそっとしておいてやらないのですか!」
世間から作品の悪評をされたゲーテの言葉。
カフカは生きもの、弱いものへの共感が強い。療養中のカフカが共に暮らしていた少女がハエを叩こうとした時に声を荒げた言葉。少女はカフカに恋をしたそうです。。(恋に落ちる瞬間って、、様々ね)
ゲーテ「欠点のなかには、その人にとってなくてはならぬものもある。」
カフカ「お気づきですか、お母さん、ぼくのこの欠点に。あなたは決してそれを受け入れられないでしょう。」
ゲーテの親友の詩人・シラーは腐った林檎をいっぱい保管し、臭いを嗅がないと生きていけない。。ドン引きはしつつ、友人が悪癖を直したら、寂しさを感じるのだそうです。。(あやまちも愛してあげるところは、、いいなぁ)
カフカが婚約者の母親に出した手紙の一節。。手紙を出した時点で欠点あり。。(お母さん、、ゲーテの言葉を読んでほしい)
ゲーテ「わたしはあのままの自分に満足していたし、自分を高貴な人間と思っていたから、たとえ君主にされたとしても、とくに不思議に思わなかっただろう」
カフカ「昨夜の散歩のとき、往来のどんなちょっとした騒音も、自分に向けられたどんな視線も、ショーケースの中のどんな写真も、すべてぼくより重要なものに思われた」
人より秀でると自信に溢れるゲーテ。。自己肯定炸裂。
カフカは、人ではなく物と比較。。物より価値がない。。自己否定炸裂。。これでは、どこにいても苦しい。
114個の言葉の解説がわかりやすく、エピソードが面白かった。それにしても交互でよかった。。ゲーテの強さに圧倒され、カフカの弱さが心を鎮めてくれる。。不思議とゲーテの力強い言葉に絶望を少し感じ、カフカの言葉の中に希望が見える時がある。。どう感じるかはその時の心境や感情によるものなんだと思う。。お互い、絶望も希望も悲しみも喜びも持ち合わせての名言。
この二人の中間からややゲーテ寄りの人がいいなぁ(ただの普通の人?)わたしがややカフカ寄りなので。。