みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『たまさか人形堂物語』 津原 泰水

 

たまさか人形堂物語 (文春文庫)

たまさか人形堂物語 (文春文庫)

  • 作者:津原泰水
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2016/09/09
  • メディア: Kindle版
 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

祖母の形見の零細人形店を継ぐことになったOL澪。押しかけアルバイトの人形マニア、冨永くんと謎の職人、師村さんに助けられ、お店はそこそこの賑わいを見せていた。「諦めてしまっている人形も修理します」という広告に惹かれ、今日も傷ついた人形を抱えたお客がやってきて澪たちは東奔西走することに。チームワーク抜群の3人の活躍が始まる。

 

【感想】

祖父からほぼ強制的に人形店を受け継がされてしまった澪。時代遅れな商売と嘆きながら、修復を中心に人形マニアの冨永くんと謎の職人・師村さんとそこそこ忙しい日々。ほのぼのした日常ではあるが...感情が渦巻く話です。

 

「毀す理由」持ち込まれた人形たちを決して完璧に直すのではなく、依頼主と人形の関係性と真意を汲みとり、修繕する人形修理士・師村さんの心の職人技に惚れ惚れしました。テディベア作りの天才?冨永くんが異彩を放つ話でもある。

「恋は恋」ダッチワイフ...ラブドール。。なるほど。確かに人形だぁ。精緻に作り込まれたラブドール麗美ちゃんを預かる。彼女は物言わず、ただそこにいるだけ。静かな彼女に周囲の心はざわつく。恋は恋。いかなる恋も切ない。

「村上迷想」澪の遠縁にあたる親戚に巻き起こる事件。サスペンス的なお話。雛人形が何体も並ぶ光景は壮観ではあるが、背景に壮大な歴史を背負ってるかと思うと、ゾクっとするなぁ。

「最終公演」チェコの人形劇団を語る職人の話。あやつり人形の神業。狂気が宿る人形遣い。最終公演終了後にユニークな仕掛けが。。仕掛けの全容は明らかにされないけど、ワクワクしちゃうな。

「ガブ」謎の職人・師村さんの過去がわかる。たまさか人形堂のほのぼのとした日常を一変してしまうだろう天才人形師の悲しい過去。ドールメーカーCAPTUREの社長・束前さんが仕事デキル男で常に忙しい。「つかまえ」だからキャプチャー。あはは。お気に入りキャラです。師村さんと束前さんの意外な繋がりにも注目したい。

「スリーピング・ビューティ」師村さんの過去を知り、店を畳む決意をする澪。。後先考えずに行動しちゃう澪ではあるが、、意外な結末に今後が楽しみだなぁという最終話でした。

 

昔から目にしてきた人形やぬいぐるみたちの由来、歴史、文化、芸能、人形への想い。あまり考えたことがなかった。全編通して、人形への人の感情が並々ならない。。嫉妬、愛情、慕情、狂気、殺意、所有欲、執念...。人形には魂が宿るのか、持ち主の歴史が垣間見えるのか、安易に近寄ってはならない気持ちにもなる。

小さい頃から大人になるまでずっと一緒にいた熊のぬいぐるみ(名はポン太)を思い出す。。🧸