みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞を思うがままに

『生殖記』 朝井 リョウ

 

生殖記

生殖記

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おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

とある家電メーカー総務部勤務の尚成は、同僚と二個体で新宿の量販店に来ています。
体組成計を買うため――ではなく、寿命を効率よく消費するために。
この本は、そんなヒトのオス個体に宿る◯◯目線の、おそらく誰も読んだことのない文字列の集積です。

【感想】

今までたくさんの本を読んだし、色々なジャンルの本も読んだと思うし、様々な語り手の本も読んできました。でもまさか〇〇が語り手の物語を読むとは思わなかった。びっくりです。オス個体の〇〇が、ヒトを分析し、生きづらいヒトの生態、生殖を語ります。語り手は尚成に宿るまで、いろいろな生物に宿っていたんです。様々な種の経歴を持つ語り手から見るヒトの営み。この着眼点がすごいなと感心してしまう。

他の生物にはないヒト特有の「悩む」について考察していきます。「生きていて虚しい」という感覚はヒトにしか抱かない。「自分が必ず死ぬ」という人生のリミットを知る種もヒトだけ。そこに「悩む」原因があるのではないか?と語り手は推察するのです。寿命を効率よく消費するために生きる尚成はある疑問を抱きます。なぜ人は成長したがるのか?「共同体感覚」という言葉がくりかえし出てきます。「均衡、維持、拡大、発展、成長」を目指していく「共同体感覚」に尚成は「しっくり」こないのです。日々成長を求められていく社会。「拡大、発展、成長」のために貢献していくことで幸福度が高まるヒト。必要性の感じられない新機能搭載の電化製品がどんどん商品化されていくのも、ヒトは「拡大、発展、成長」を止めることができないから。この「共同体感覚」に苦しむ尚成が「共同体」という監視の目から外れた時(余暇ですね)、「しっくり」生きる術を模索していくのです。模索した先がただ寿命を効率よく消費するためだけ過ぎて、笑えたけど、ヒトらしい。成長欲求は誰しもあるだろうけど、成長をし続けなければいけないというヒト社会の圧力はしんどい。自分なりの「しっくり」を求め続けるのもヒト特有ですね。

先が気になるわけでもないし、ものすごく考えさせられる内容とまでもいかないけど、一行も読み落としたくない。そして笑える箇所がいくつもある。不思議な魅力がありますね。リョウくんって。(倒置法で喋ってる。ってことはこのあと衝撃的な内容来るぞっ..尚成の思考抜粋)

本屋大賞ノミネート全作品を読み終えました。発表は9日。間に合ってよかった。今年も個人的順位と予想順位を決めたいと思います。発表前に公開します。リョウくんは..大賞ではないかな(←衝撃的な内容笑)