おすすめ ★★★★☆
【内容紹介】
昭和の釧路に生まれた秀男は、色白小柄で人形のように愛らしく、物心つく頃には姉の真似をして自分を「アチシ」と呼んだ。厳格な父に殴られ、長兄には蔑まれ、周りの子どもに「女になりかけ」とからかわれても、男らしくなどできず、心の支えは優しい母マツと姉の章子、そして初恋相手の同級生男子・文次の存在だった。男の体に違和感がある自分が、自分らしく生きるため、そして「女の偽物」ではなくいっそ「この世にないもの」になるため、秀男は高校を中退し家を飛び出していく。
札幌のゲイバーで出会った先輩マヤに教えを仰ぎ、東京、大阪、やがて芸能界へ。舞台で美しくショーダンスをするのに邪魔な睾丸をとり、さらには「フランスで陰茎をとる」とマスコミに表明し……。
【感想】
「虚構に宿る真実が見たくて書きたい」という桜木さんの執筆依頼に「あたしをとことん汚く書いて」と返事したカルーセル麻紀さん。生まれた体と性の違いに悩みながら、偽物の女じゃなくて、あたしの本物になりたい。自分らしく生きる。「自分」に強くこだわるところに魅力を感じる。どんな逆境にも立ち向かい、自己表現のできる場に挑戦する姿がかっこよかった。
釧路での子供時代からゲイボーイを目指したすすきの時代がとてもよかった。高校中退して、ゲイバーを転々とする10代って凄すぎる。波乱万丈の人生は痛みもあるけど美しさと強さで乗り越えていくところに清々しさを感じる。家族や世間に否定される一方で、人に恵まれ、愛されるヒデ坊。学生時代の親友・ノブヨや夜の街の師匠・マヤなどヒデ坊が愛した人々も魅力的。文次はそんなに...笑。
ヒデ坊の望郷への想いや母親と姉のショコちゃんとのエピソードは涙する。母とのお風呂のシーンは何度読んでも泣けてくる。。「自分の生んだ子がどんな姿でも、誰かを幸せにしているならそれでいいよ」。。カルーセル麻紀さんの一番の理解者だったというお母様もたくさんの葛藤があったと思うけど、「生きていてほしい」という親心にうなずくばかりです。
「つらい経験はつらそうに話さない。三日後でも一年後でも十年後でも、笑って話しましょう。二度あることは三度ある。次は振り出し。笑って乗り切らないと、つまんない四度目が待ってるだけ」。。この言葉に救われる~。ヒデ坊の人生は汚いどころか、緋色に輝きを放つ美しさがある。続編も楽しみ♪