みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『老虎残夢』 桃野 雑派

 

老虎残夢

老虎残夢

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おすすめ ★★★☆☆

【内容紹介】

私は愛されていたのだろうか? 
問うべき師が息絶えたのは、圧倒的な密室だった。碧い目をした武術の達人梁泰隆。その弟子で、決して癒えぬ傷をもつ蒼紫苑。料理上手な泰隆の養女梁恋華。三人慎ましく暮らしていければ、幸せだったのに。雪の降る夜、その平穏な暮らしは打ち破られた。

 

【感想】

面白かった〜♪

舞台は南宋時代の中国、雪に覆われた八仙島。島の中心にある湖に浮かぶ八仙楼に住む武侠の達人・梁泰隆、湖のほとりにある屋敷には 弟子の蒼紫苑と泰隆の養女・梁恋華が暮らしている。
泰隆は武侠の奥義を授けるという信書を三人の強者に送り、八仙楼に招く。20年ぶりの再会をする武侠の達人たちは宴会で盛り上がる。。その明朝、泰隆が八仙楼の寝室で毒殺?胸には刀が...。

ここからが面白い。事件の現場は湖に浮かぶ八仙楼。湖を渡る船は八仙楼側に繋いである。船を使わずにどう八仙楼に辿り着いたのか?と、疑問が出るのですが、、武侠の武術の一つである「内功」を極めた者は船を使わなくても体が宙に浮いて、湖を軽く飛び超える力「碧眼飛虎」という技があるのです(ちなみに「踏雪無痕」という技もあって、足跡を残さずに雪を歩くことができる)。。「碧眼飛虎」ができるのは、泰隆と紫苑。。師の仇を討つ紫苑も容疑者なのです。。実は湖を渡る秘密の裏技(一般人が使う普通の手段)を知る人物・恋華も...武術の達人達も荒技で湖超えできるかも?ということで、全員容疑者。そして全員仇討ちに闘志を燃やすのです。。真相に行き着くまでそれぞれの背景が語られるうちに、泰隆の過去が明らかに...。中国やモンゴルの歴史も絡めてあるけど、重厚ではなく、トリックも真相も単純なのです。。かえってそれが良かったかも。歴史が深すぎたり、トリックが複雑だとキャラ達が浮いてしまうし...。密室の定番「孤島」、ミステリーの王道「館」に、ミステリーのお約束?を覆していくイリュージョンのような達人たちの武術(妖術?)という「特殊設定」、そして...「百合」。。紫苑と恋華の同門同志という掟破りの恋愛...姉妹という近親...禁忌の恋愛模様が相まって、十分楽しめるエンターテイメントでした。