みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『龍神の雨』 道尾 秀介

 

おすすめ ★★★☆☆

【内容紹介】

添木田蓮と楓は事故で母を失い、継父と三人で暮らしている。溝田辰也と圭介の兄弟は、母に続いて父を亡くし、継母とささやかな生活を送る。蓮は継父の殺害計画を立てた。あの男は、妹を酷い目に合わせたから。――そして、死は訪れた。降り続く雨が、四人の運命を浸してゆく。彼らのもとに暖かな光が射す日は到来するのか? 

 

【感想】

事故で母を失い、継父と暮らす蓮と楓。妻を失った継父は酒に溺れ、兄妹に暴力を...ついに妹に...。妹を守りたい兄は殺意が芽生える。兄妹の悲しい展開にため息が出てしまう。。「どこまで行けば、自分は最悪にたどり着けるのだろう」と、蓮と楓は悪い方向へ...。

父が病死をし、継母と暮らす辰也と圭介。継母が実母を殺したのではないか?と疑う兄に不安を抱く弟。辰也の反抗的な態度に苦悩する継母を労わる圭介。圭介の心には大きな傷があり...光が射し込んで欲しいと願うけど、とてつもなく不穏な影が...。

四人を最悪な方向に導くかのように降り続く雨。あの時、雨が降らなければ...と、雨が四人の運命を浸してゆく。両親を失った10代の子供たち。血の繋がらない親との暮らしに複雑な心境を抱え、鬱々と生きる。辛い現実が悲しい先入観を作り出し、全てを狂わす。。思い込みって怖いわ。。真相に辿り着いても疑心を晴らすこともなく、なお厳しい選択を迫られる。不条理ではあるが、とても現実的な不確かさを残す結末に、読み手の決断も迫られていそうな感じ。。どうか雨が全てを流して、晴れやかな青空の下で生きて欲しいと願うばかり。

あとがきでは、道尾さんから直々に解説を依頼されたライターさんが作中に差し込まれるいくつかのラジオニュースを独自の分析で謎を解明してました。仮説だけど、雨が上がり、明るい光景が浮かんでくる。。