おすすめ ★★★★☆
【内容紹介】
「何の遠慮もいりません。元々は忘れ物なのですから」。キャンディー屋の中に設えられた『忘れ物図書室』。部屋には世界中の不思議なおとぎ話たちが収められていた…。画家・樋上公実子のイラストをモチーフに、作家・小川洋子が紡ぎだした残酷で可憐な四編の物語。
【感想】
本を開くとキャンディーの入ったスワン型の陶器と赤い頭巾を被った妖艶な女性が横たわるイラストが飛び込んでくる。この絵から生み出される小川洋子さんの物語を想像してみる。。甘くて残酷で魅惑的な美しい世界が広がるんだろうなぁ。。と、読む前からドキドキする。
ページを捲ると、そこはキャンディ屋さん。スワン型の陶器に入ったキャンディの詰め合わせセットが人気商品。レジの裏にある扉...「忘れ物図書室」という部屋があり、店主の祖父が世界漫遊の旅に出て、忘れ去られた異国のおとぎ話を蒐集し、綺麗に製本し、図書室に収めた。贅沢で壮大な趣味の部屋なのです。閲覧自由。収められたおとぎ話...気になりますね。
小川洋子さんが描くおとぎ話は、少し独特で少し不思議で少し優美で少し残酷。樋上さんのイラストと小川洋子さんの物語はお互いを引き立たせていました。妖艶な少女の表情が好き。どれも短い物語で、毒も控えめでしたが、ラストの「愛されすぎた白鳥」は静謐で美しい情景に魅了されます。重すぎる純愛は悲恋が似合う。
詰め合わせキャンディ...好きな味を手にした喜びと薄荷を手にしたガッカリさ笑。懐かしい気持ちも思い出され、ほのかに温かい甘みが広がっていくのでした。