みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『女の人差し指』 向田 邦子

 

おすすめ ★★★★★

【内容紹介】

ドラマ脚本家デビューのきっかけを綴った話、妹と営んだ小料理屋「ままや」の開店模様、人間町からアフリカまで各地の旅の思い出、急逝により「週刊文春」連載最後の作品となった「クラシック」等、名エッセイの数々を収録。日々の暮しを愛し、好奇心旺盛に生きた著者の溢れるような思いが紡がれた作品集。

【感想】

向田さんのエッセイが大好き過ぎて、何度目かの再読。洞察力や興味深い視点、ユーモアなど毎回読む度に心が豊かになっていくのです。食いしん坊というだけあって食に関するこだわりがすごい。一に材料、二に包丁、三、四がなくて、五に器。全てケチらず極上のものばかりを扱う向田さん。脚本を執筆中、その日の献立作りに頭を巡らせてしまうと原稿に献立を書き始め、仕事を放棄してしまうことしばしば(向田さんの怠け癖がわたしにもあるのでなんかホッとする)

都内に気軽に行ける小料理屋を探してもない!だったら作ろう!という発想に脱帽。妹の和子さんを巻き込んで小料理屋さんを開店してしまう行動力と大胆さがなんとも豪快。しかも赤坂にお店を構えるとは...素晴らしい。旅のエッセイも好きです。駅の壁に土地の言葉で書かれた小さな落書きひとつに旅情を感じ、ささやかな喜びに感謝する一方、駅が小綺麗で近代的だと失望して不満を漏らす。ローカル駅は適度に古びて、適度に暗く、適度に不便でないと満足はいかないのです。なんてわがままな旅人なんだぁと向田ファンのわたしはキュンとするのです。土地の人も便利な方がいいに決まってる笑。

旅先で出会う食事。モロッコのホテルの朝食。岩塩に付けて食べたゆで卵。素朴な食にもその土地の思い出が加味されて、時が経っても、なつかしく味が舌に残っているそうです。どの旅も味わい深いお話です。

向田さんのエッセイで、日々の楽しみ方を教えてもらいます。食にはマメだが、仕事も含め、ズボラで飽き性で根気が足りないとご自分を評価する向田さん。丁寧に日常生活を紡ぎ、凛とした生き様から、たまに見せるうっかりエピソード(失敗談もなかなか大胆..笑)まで。魅力溢れ、尊敬する女性の一人です。この本もだいぶ古くなったので、新しい本を買おうとネットで見たら、表情が面白い猫ちゃん?の表紙。。買います。