みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『かか』 宇佐見 りん

 

かか

かか

 

おすすめ ★★★★★

【内容紹介】

19歳の浪人生うーちゃんは、大好きな母親=かかのことで切実に悩んでいる。かかは離婚を機に徐々に心を病み、酒を飲んでは暴れることを繰り返すようになった。鍵をかけたちいさなSNSの空間だけが、うーちゃんの心をなぐさめる。脆い母、身勝手な父、女性に生まれたこと、血縁で繋がる家族という単位…自分を縛るすべてが恨めしく、縛られる自分が何より歯がゆいうーちゃん。彼女はある無謀な祈りを抱え、熊野へと旅立つ―。未開の感性が生み出す、勢いと魅力溢れる語り。痛切な愛と自立を描き切った、20歳のデビュー小説。第56回文藝賞受賞作。

 

【感想】

かか弁(方言ではないです)という、母親独特の言葉で語られるうーちゃんの独白文です。最初は読みにくくて、時間がかかりましたが、慣れていくうちに、引き込まれるのではなく、引きずり込まれていきます。。

かかはとと(うーちゃんの父)に浮気をされ、離婚をします。アルコールに溺れ、暴れて、心の自傷行為を繰り返します。かかの「痛み」がとても痛い。暴れ発狂する痛み。子供たちから拒絶される痛み。痴呆症の母親(うーちゃんの祖母)から忘れられる痛み。愛情を欲しがる切ない痛み...どうしようもないかかの姿に心がザクザクと切り刻まれていきそうになり、読んでいて苦しいのです。。うーちゃんのかかへの痛切な愛。誰よりもカカを愛し、誰よりも憎むうーちゃん。。カカへの想いが抱えきれなくなり、心の中でかかを殺す。。うーちゃんの感情が迫ってきて、体全体に負のオーラがまとわりつき、胸が圧し潰されそうになりました。

「かか、かか、だいすきなかか、そいでも今のかかは穢れきってうざったくて泣くのがわざとらしくて自分のことしか考えてなくてころしたいほどにくいと思うことがある。もう手遅れなんです。」

物語自体はとても短いのですが、人間の蠢く感情が濃縮されていて、飲み込まれていき、圧倒され疲れ果てたのです。。情景や暮らす人々の描き方が丁寧で、生々しく感じられ、匂い立つのです。。こんなにも感情や感覚を巧みに文章化する20歳の作家さん。芥川賞受賞作品『推し、燃ゆ』も控えてます。。続けて読めないなぁ。。恐るべしです。