おすすめ ★★★★☆
【内容紹介】
結婚して十年。夫婦関係はとうに冷めていた。夫の浮気に気づいても理津子は超然としていられるはずだった(「妻の超然」)。九州男児なのに下戸の僕は、NPO活動を強要する酒好きの彼女に罵倒される(「下戸の超然」)。腫瘍手術を控えた女性作家の胸をよぎる自らの来歴。「文学の終焉」を予兆する凶悪な問題作(「作家の超然」)。
三つの都市を舞台に「超然」とは何かを問う傑作中編集。
【感想】
「妻の超然」妻視点が面白い。年下の浮気夫を手の平で遊ばせている妻。。妻と夫の関係は冷めても妻は夫を観察している。心の毒舌にクスクスしちゃう。。何度も繰り返す夫の浮気...バカらしいと呆れてはいるが、理解もしている。夫の寝言に笑う妻。。確かに笑える...どことなく妻に共感してしまうわたしも超然としてるのかなぁ笑。
「下戸の超然」九州男児の広生は自分のことを「僕」と呼び、下戸。九州では女々しいと言われてしまう。。つくばの職場で恋に落ちた彼女は酒好き。恋人関係となり、幸せな二人の間に小さな摩擦が...下戸男と酒飲み女の出会いから別れまで短い物語の中で描かれています。下戸の生きづらさ。。理解し合う難しさ。。この話が一番面白かった。ちなみにお酒大好き笑。
「作家の超然」これはとても哲学的で一番難しかった物語。「文学がなんであったとしても、化け物だったとしても、おまえは超然とするほかないではないか。」手術の為に入院した作家が仕事から離れ、ベッドの上で文学に対して超然とするべきではないか?と苦悩しているが...人として一番超然としているように思える。
初めての絲山作品。「超然」がテーマなので、我関せずで達観している主人公たちではあるが、人との関わりで超然から、いつのまにか空回りになることも...絲山さんの言葉の説得力は凄いです。独特な表現で表す複雑心理...楽しく読めました。他作品も読みたいです。