おすすめ ★★★★☆
【内容紹介】
誰かに食べさせたい。願いがかなって杉の木に転生した亜沙は、わりばしになって、若者と出会った―。『むらさきのスカートの女』で芥川賞を受賞した気鋭の作家による、奇妙で不穏で純粋な三つの愛の物語。
【感想】
「木になった亜沙」幼少期から自分の手から誰一人食べてもらえない。「食べて。お願いだから」と切実に願っても、願い叶わず命を落とす。わりばしに生まれ変わった亜沙はある若者と出会い..食べさせる喜びに満ち溢れる。
「的になった七未」どんぐりも、ドッジボールも、水風船も、空き缶も投げつけられるが、なぜか七未には当たらない。「ナナちゃんがんばれ、あたればおわる」と当てられた子達から応援される七未は必死に当たりに行くが、誰からも当ててもらえない。
「ある夜の思い出」15年間ゴロゴロと畳の上で過ごした女性のある一夜の思い出。父と喧嘩して、家を追い出される(歩行も億劫で腹這い状態で彷徨ってる笑)商店街で出会った男(腹這い状態笑)が連れていってくれたのは、お母さんの家だった。でも、どうやら「本当のお母さん」ではないようで…。
どの話も奇想天外で最初はクスクスっと笑ってしまう。想像するとあまりの滑稽さに苦笑いしてしまう部分も多々ある。。しかし風変わりな事が身に降りかかる主人公(特に亜沙と七未)の背負う悲劇が孤立に向かわせ、哀しみから恐怖へ...抗えない運命に飲み込まれても、人恋しさ、愛されたい、幸せにしたい..健気にまっすぐに生きる女性たちの深い愛が切なくて静かに胸に押し寄せてくるから何とも不思議...。幸せって何だろ?ってふと考えてしまう。少しだけ見える世界を変えられた気もする。
初めての今村夏子さん...不穏な世界...好きかも^_^