みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『船に乗れ! Ⅱ 独奏』 藤谷 治

 

船に乗れ! 2 独奏 (小学館文庫)

船に乗れ! 2 独奏 (小学館文庫)

  • 作者:治, 藤谷
  • 発売日: 2016/06/07
  • メディア: 文庫
 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

衝撃の展開に目が離せない、急展開の第二部。

音大附属高校の二年生に進学した津島サトルは、ヴァイオリンの練習に励む南枝里子の姿に触発され、チェロで芸大を目指す決意をする。同級生たちが優秀な新一年生たちに焦りを覚えるなか、サトルは祖父から、ドイツ・ハイデルベルグで二か月間チェロを学んでくるという機会を与えられる。
ショックを隠し切れない南だったが、出発前には「ドイツで楽譜を買ってきて」と笑顔で送り出されたサトル。しかし意気揚々と帰国した彼は、思わぬ事態に巻き込まれていく――。
若さゆえの自我の暴走が、オペラやオーケストラの名曲と共に切なく描かれる。

【感想】

若さゆえの自我の暴走。。衝撃的な展開。。脳裏にかすめていた展開ではあったが、17歳男子にとっては残酷な展開。。乗り越えられないのではないか?

少しネタバレします。

恋人・南との別れに自暴自棄のサトルは倫社の金窪先生に疑問をぶつけ、哲学的論争の果てに論破される。その悔しさで起こした行動。ほんのちょっとした自分の言動が尊敬していた教師の失職に追い込む。。大人になったサトルの中で未だ消えない罪悪感として残る。とても残念。。大人になるにつれ、恥として抱えていく苦しみ...。

金窪先生の最後の授業。ソクラテスの言葉。

「私に死を課した諸君よ。諸君が私や、課したる死刑よりも、ゼウスにかけて、さらに遥かに重き罰が、諸君の上に来るであろう...(中略)...今よりもさらに多くの問責者が諸君の前に出現するだろう」

金窪先生の授業、好きだったのに...哲学のお話をもっと聞きたい。

 

本作ではサトルにとって大きな喪失が連続降りかかる。。嫉妬心、苛立ち、暴走、後悔....ラストシーンで乱れた心を抱えながら、美しく奏でるサトル...どう向き合えるのか..。これはこれは最終巻が気になるわ〜。