おすすめ ★★★☆☆
【内容紹介】
「君を殺す」―大量殺戮の季節が生んだ、復讐の誓いとふたりの訣別から半世紀が経った。政治家となったソリヤは、理想とする“ゲームの王国”を実現すべく権力の頂点を目指す。一方でムイタックは自身の渇望を完遂するため、脳波測定を利用したゲーム“チャンドゥク”の開発を、早熟な少年アルンと共に進めていた。過去の物語に呪縛されながらも、光ある未来を希求して彷徨うソリヤとムイタックが、最後に手にしたものとは…。
【感想】
物語はポル・ポト独裁政権崩壊後の近未来(2023年)のカンボジア。
ソリヤは次の総選挙で首相の座を目指し、民衆に演説をしている中、暴漢に襲われるが未遂に終わる。刺殺未遂事件を追う刑事、不正を暴こうとする記者(彼の特殊能力は苦笑い)、ソリヤ政権を阻止したいティウンとムイタック...。光り輝くソリヤに暗雲が広がる。。
ムイタックは大学研究室でP120と呼ばれる「未来予知脳波」を研究する。記憶を思い出す前にその概念が言語化される脳波...難解。学生・アルンとP120を取り入れたゲーム開発へ。ソリヤの養子・リアスメイも加わり、「チャンドゥク」というゲームを作る。。
不思議で、難解な物語でしたが概ねこの2点が『ゲームの王国』の筋なのだろうか?
ソリヤの理想の国家。不正が横行しているカンボジアで「誰もが公正なルールを守る社会作り」への信念。では、ルールを守らせるために必要なこととは?
Q 教師が生徒にルールを守らせようとすればするほど、ルール違反者が出てくる。違反者をなくすには?
A 学校そのものを無くす。「ルール違反自体を原理的に不可能にする」(国を滅ぼす独裁者的思考?)
ムイタックの「チャンドゥク」を使い、プレイヤーの脳に直接の真実を擦り込む事が可能かどうか?ソリヤ政権阻止に利用可能か?
ソリヤの強い正義心と危険な方向性を阻止したいムイタック。勝利という誇りを賭ける二人のゲーム。。ポル・ポト時代前にソリヤとムイタックが楽しくトランプゲームをした時点で勝敗は決まっていたのかもしれない。
下巻は途中で挫折してしまったけど、研究内容は興味深くて面白かった。脳波の作用がもたらす記憶の改竄、プレイヤーの「他人の記憶を思い出す」(記憶のバグ発生)に興味が湧いたおかげで読むことができました。「記憶は一種の小説である」脳波と文学。脳波から言語化された言葉で物語を作るってすごいなぁって単純に思った。いくつかのキーワードと想像力で無限にお話は作れる...才能があれば笑。。人間の信念への強い貫きが国を平和にするか脅かすか..何事にもリスクが付き物。。SF小説って「スコシ・不思議」ね(『凍りのくじら』 辻村 深月 - みみの無趣味な故に・・・より)
上巻の感想はコチラ↓
『ゲームの王国 上』 小川 哲 - みみの無趣味な故に・・・