みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『ノースライト』 横山 秀夫

 

ノースライト

ノースライト

 

おすすめ ★★★☆☆

【内容紹介】

横山ミステリー史上最も美しい謎。
熱く込み上げる感動。

一家はどこへ消えたのか?
空虚な家になぜ一脚の椅子だけが残されていたのか?

【感想】

警察小説ではない横山作品を初めて読みました。建築家のお仕事小説。

一級建築士の青瀬が設計した住宅・通称「Y邸」(「住まい200選」なら選ばれ、高評価を得る)
「信濃追分に八十坪の土地があります。建築資金は三千万円まで出せます。すべてお任せします。青瀬さん、あなた自身が住みたい家を建ててください」
と吉野夫妻から依頼され、北側からの光(ノースライト)が差し込む家を作り、夫妻から喜ばれるが、住んだ形跡がなく、無人の家だった。家には「タウトの椅子」だけが残されていた。吉野一家の行方は?なぜ無人の家の設計を青瀬に依頼したのか??が大きな謎ではあるが、描きたかったのは仕事と家族を同時に失った男の心の内だと思う。過去の栄光が苦しみでもあり、救いともなる。

 

ダム建設で働く父の移転で各地に渡り住む子供時代、建築家を目指す学生時代、妻との出会い、結婚、離婚に至るまでバブル期を駆け抜けた過去と崩壊後の喪失、仕事、妻娘への思いなど現在の葛藤がこれでもかと丁寧に丹念に描かれていました。何もかも失った青瀬がY邸に住んでいたはずの吉野一家に投影した幸せな家族像、柔らかで温かい家への憧れがノースライトから感じられました。

「どこか遠慮がちに部屋を包み込む柔らかな北からの光。東の窓の聡明さとも南の窓の陽気さとも趣の異なる、悟りを開いたかのように物静かなノースライト」

 

建築家ブルーノ・タウト氏の知識も詳細に書かれています。建築家の仕事、家具職人、インテリアなど興味深いお話も多々ありました。個人的に興味があるので面白かった。
とはいえ...中盤、少し気持ちが中だるみをしてしまい、後半の加速度が増すも、謎の解明は?と残りページ数が気になりだす始末。。
どちらかというと...警察小説の方が好きかな。わたしはね。