みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『世界の果てのこどもたち』 中脇 初枝

 

世界の果てのこどもたち (講談社文庫)

世界の果てのこどもたち (講談社文庫)

 

おすすめ ★★★★★

【内容紹介】

戦時中、高知県から親に連れられて満洲にやってきた珠子。言葉も通じない場所での新しい生活に馴染んでいく中、彼女は朝鮮人の美子と、恵まれた家庭で育った茉莉と出会う。お互いが何人なのかも知らなかった幼い三人は、あることをきっかけに友情で結ばれる。しかし終戦が訪れ、運命は三人を引きはなす。戦後の日本と中国で、三人は別々の人生を歩むことになった。戦時中の満洲で出会った、三人の物語。

 

【感想】

終戦後の満州で生きる日本人の苛酷さに何度も本を閉じてしまった。。やむなく子を殺す親の悲劇。。命乞いをする子供たち。。極限状態の中、人間らしさを失っていく大人たちの姿。。次々に死んでいく人々。。珠子の目は壮絶な光景を休みなく焼き付けていく。
日本で生きる美子。人種の壁に辛く惨めな思いをするが、前を向いてひたむきに生きる。。
珠子も美子も国籍を隠しながら生きていかなければならない様子がとても辛い。。
裕福な暮らしをしていた茉莉は空襲で家族を失い、置かれた状況が一気に激変する。。空襲後は盗難、略奪が繰り返される。。おばさんにキャラメル一粒を手に握らされた茉莉は優しさを感じる間も無く、別のおばさんに握らされた小さな手の指を一本一本開かせキャラメルを奪われる。。この経験、感触は茉莉の一生忘れられない思い出となる。。

 

戦争は誰が何のためにしたものだったのか?国籍とは?自分は何人?
戦争で亡くなったのは、戦地の軍人たち、戦地の国民、空襲や原爆の被害にあった人々だけではない。。終戦後に生き抜く人々や満州の地の開拓民も。。たくさんの尊い命が失われた。。
日の丸の旗を振って戦地に送り出し、武器の補充の為に金属供出、平和のために敵国を懲らしめなければならないと当然のように思い込んでいた国民(子供たちも)の受け止めきれない衝撃はとても重くのしかかるものだと思う。。

 

たくさんの事を考えさせられた。。戦災孤児在日朝鮮人、残留孤児など書ききれないくらい、重く深く。。戦争の歴史をテーマとする小説を読むたびに残酷さをいつも思い知らされてはいたけど、、本書を通して、それぞれが置かれた場所で必死に生き、境遇や不幸から生まれる疑問、苦悩を抱えながら人の厳しさ、小さな優しさを胸に留め、「悲劇の連鎖」をくり返してはならないという強い想いが伝わってくる。。幼い3人が満州で1つのおにぎりを分け合い、友情を深めていった場面。。国と国も争うのではなく、おにぎりを分け合う気持ちが、、持てたらいいのに。。