みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『コロナと潜水服』 奥田 英朗

 

コロナと潜水服

コロナと潜水服

  • 作者:奥田 英朗
  • 発売日: 2020/12/22
  • メディア: Kindle版
 

おすすめ ★★★★★

【内容紹介】

小さな救世主現る! 五歳の息子は、新型コロナウイルスが感知できる? パパの取った究極の対応策とは――「コロナと潜水服」(表題作)ほか全五編。コロナ禍の世界に贈る、愛と奇想の奥田マジックが光るファンタジー短編集。

【感想】

ついに「コロナ」というタイトルの本が...しかも奥田英朗さんの短編集。帯にはコロナ禍の世界に送る愛と奇想の奥田マジック。帯に騙されることは多々あるけど、これは期待が高まりますよ。

 

「海の家」妻の不倫発覚で家を出た小説家が、ひと夏、葉山の古民家で過ごす。ひとり暮らしを満喫する中、そこで出会ったのは...。(手の中で転がされている夫の最後の妻への小さな意地悪が可愛らしい。また浮気されそうだけど笑)

 

「ファイトクラブ」早期退職の勧告に応じず、追い出し部屋に追いやられた男性が、不慣れな仕事をこなす日々。追いやられた仲間たちと新たに始めたこととは...。(閑職につく哀れな中年サラリーマンたち。やりがいのない仕事だからといって退職するわけにはいかない。教育費、家のローン、親の介護費...みんな生活を抱えて生きているんだよ)

 

「占い師」人気プロ野球選手と付き合うフリー女性アナウンサー。恋愛相談に訪れた先でのアドバイスとは...。(堂々と玉の輿に乗る!と宣言する女性アナウンサー。占い師というより呪術師?この話は一番思い入れはないけど、この女性が...かなり怖いよ。)

 

「コロナと潜水服」五歳の息子には、新型コロナウイルスが感知できる?パパがとった究極の対応策とは...。(これはツボッた。笑いが止まらなった。感染したのでは?という不安から徹底した感染対策をする心配性のパパと冷静な妊娠中のママ。なぜ妻はこんなに冷静なんだ?とイライラする夫。。その理由がラストに判明します。小さな救世主にラストはさわやかな風が吹きました。これは暗いコロナ禍を明るくする素敵な家族愛です。傑作です~♪)

 

「パンダに乗って」

若い頃から欲しかった古いイタリア車(初代フィアット・パンダ)の納車の為、東京から新潟の中古車販売店に出向く。自宅へ戻ろうとするが、カーナビの不思議な案内が次々に起こり...。(一番好きです。新潟の町を巡りながら、愛車を大切にしていこうという気持ちが強く思えます。やさしい気持ちに包まれ、ラストにふさわしいお話でした。)

 

何気ない日常の中にオカルトのような出来事を織り交ぜ、ユーモア溢れるファンタジーですが、とても現実的な短編集。コロナを題材にした話は表題作だけですが、鬱々した世の中を笑いで吹き飛ばしてくれた。思いっきり笑わせてくれるなんて、、さすが奥田さんです。あまりにも声高々に大爆笑しているので、家族にドン引きされてしまいました。もし潜水服を着ている人がいても、中の人は至って真面目に感染対策をしているんだろうなぁって温かい目で見守ってしまいそう。。これは面白かった。