みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『恋愛未満』 篠田 節子

 

恋愛未満

恋愛未満

  • 作者:篠田 節子
  • 発売日: 2020/04/21
  • メディア: Kindle版
 

おすすめ ★★★☆☆

【内容紹介】

専業主婦の美佳は、夫の大介がいまだにかつての友人たちと遊んでいることに不満を募らせていた。特にその中にいる吾妻智子の存在は、美佳の心をよけいに不安にさせていた…(「マドンナのテーブル」)。円満離婚が成立し、実家に戻った亜希子。ある日、同居中の母親の様子がおかしいことに気づき、病院へ連れて行くと、医者から告げられたのは母の「認知症」だった…(「夜の森の騎士」)。日常の中にある、男と女の微妙な関係性を描いた5編。

【感想】

若い頃に読んでいたら、歳を重ねた男女の距離感や関係性に理解し難いものがあるだろうが、わたしも中高年の気持ちがとってもわかるお年頃。。恋愛ではない..恋愛にはない男女の関わりや取り巻く環境による人の微妙な機微を...頷きながら楽しめました。

 

知的で温厚な50代独身男性・津田さんが歳離れた女性への不器用な求婚騒動(長年付き合いのある中年女性の視点から語られる津田さん...少し引いたが..憎めない人)

年上夫と旧友女性との友情関係に不安を抱く若い妻(男同士の友情と社会的立場の窮屈さ...それに付随する妻の立ち位置...を緩和させる女性の存在。奥が深い)

一番胸を突くお話は...

「夜の森の騎士」夫と円満離婚をした亜希子。父に先立たれた母の元で一緒に暮らすことに。その母の認知症が発覚し正気を失っていく。娘以外の人を受け付けなくなり、暴れ出す母親。疲れ果てる娘。脳検査のMRIに拒絶反応を見せる母が唯一心を許す冴えない中年男性の放射線技師。母を連れて行く放射線技師の所作に男性を感じる亜希子。レントゲンの時間だけが亜希子の自由な時間。24時間片時も母親から離れられない。母から責められ、看護師から注意を受け、孤独な闘いに疲弊していく亜希子を救う放射線技師の一言...。

介護の過酷さに胸突かれます。死を過ぎる事は残酷さを含むが、小さな灯火にもなる。優しさに変わる。。ラストはホッと安堵な気持ちが広がり、亜希子と騎士の恋愛未満に爽やかさを感じたのでした。

 

日常では恋愛未満な事は、散りばめられていると思う。。自己でも他者でも...。決してほんわか心温まる物だけではなく、騒つかせたり、しみじみさせられたりと...いつまで未満程度に翻弄されていくのだろうか...そう思うと人間って面白い。