みみの無趣味な故に・・・

読書、時々映画、絵画鑑賞の感想を書いてます。

『忘れられたワルツ』 絲山 秋子

 

忘れられたワルツ

忘れられたワルツ

  • 作者:絲山 秋子
  • 発売日: 2013/04/26
  • メディア: 単行本
 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

地震計を見つめる旧友と過ごす、海辺の静かな一夜(「強震モニタ走馬燈」)、豪雪のハイウェイで出会った、オーロラを運ぶ女(「葬式とオーロラ」)、空に音符を投げる預言者が奏でる、未来のメロディー(「ニイタカヤマノボレ」)、母の間男を追って、ピアノ部屋から飛び出した姉の行方(「忘れられたワルツ」)、女装する老人と、彼を見下ろす神様の人知れぬ懊悩(「神と増田喜十郎」)他二篇。「今」を描き出す想像力の最先端七篇。

【感想】

震災の影響を受けた人々のその後の日常が描かれているのだと思います。。掴みどころがない独特な短編集でしたが、以前のように戻れない..変わってしまったことを淡々と過ごす日常の中で受け止めているような...うっすらとした闇に包まれている不思議さが漂っています。

 

「恋愛雑用論」

恋愛とはすなわち雑用である。不要ではなく雑用である...小さな工務店で働く女性の恋愛論。

「強震モニタ走馬灯」

静かな海沿いに住む旧友・魚住の家に訪れた井手。魚住が夢中になっているのは強震モニタ。地震計の揺れを必死に見つめる魚住と美人の悩みを抱え苦しむ井手が過ごす一夜。

「葬式とオーロラ」

小学校の恩師のお葬式に向かい、豪雪の高速道路を走る。サービスエリアで出会ったオーロラを運ぶ女性に「冬の大感謝スタンプラリー」を勧められる。

「ニイタカヤマノボレ」

親戚から変わり者と思われている峰夫。巨大な鉄塔で出会った空に音符を奏でる女性は未来を予言できる預言者だった。自分の未来を聞くと「ろくな死に方をしない」と言われ、ろくでもない死に方をした。

「NR」

ホワイトボードにNR(ノーリターン)と書き込み、取引先の会社に向かう上司と部下。電車が向かう先に違和感が...どこに辿り着くのか...NR...?

「忘れられたワルツ」

姉のピアノを弾くのを見ているのが好きな風花。母の浮気相手を見つけたとピアノ部屋から出て行った姉。痒みの発作で苦しむ風花。飼育してる爬虫類に母の名前を付ける父。姉の行方が気になる風花。痒みが増してくる。(変わった家族ではあるが、不在母の存在感の濃さにじわじわ違和感を感じ、母の喪失感に気づくと物哀しくなる)

「神と増田喜十郎」

女装をしている増田喜十郎(推定70代)は横断歩道で神とすれ違った。人々を見下ろす神様はいつもそこにいた。

(神さまはいつもそばにいる。苦しんでいる人と共にいる。しかし誰も助けない。誰も救わない。神は詫びる。救えないことを。神は知っている。この世界は一本のタバコに過ぎない。神のストックは無限にあるのだ...神様は飄々と淡々と世界を眺めてる。女装をしてる老人とすれ違っても...)

 

人がふつうに生きていくことについて正しく話せる人がいるのか。世の中は悲しみで満ちている。違和感で溢れてる。。日常に自然と溶け込んで、いつのまにか染み込んで...表題作の家族は狂ってしまったのかもしれないけど、彼らの日常はずっと続く。。淡々と喪失感を描いた短編集に少しざわついてます。