みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『紺碧の果てを見よ』 須賀 しのぶ

 

紺碧の果てを見よ (新潮文庫)

紺碧の果てを見よ (新潮文庫)

 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

兄さん、いま何を見ていますか? はるか遠い戦場の海で――。感動の大作! 関東大震災の日も妹の手を離さなかった兄は海軍の道を選び、美しい妹は兄への思慕を胸に沈めた。兵学校での堅き友情、断たれた夢、引き裂かれた思い、そして兄への手紙。極限状況のなかで、若者たちは何に抗い、何を守ろうとしたのか。時代のさだめを命を振り絞って生きた若者たちを描く、切なくも凜とした「愛と同志」の物語。

【感想】

会津出身の実父から「喧嘩は逃げるが、最上の勝ち」と教えられ、反発心を抱く鷹志は海や艦に憧れる海軍の道を選ぶ。兵学校で過酷な訓練を受け、友と希望に溢れた青春を過ごし、艦隊勤務で海軍士官となる。輸送活動や護衛を命じられ、対艦攻撃戦に参加する機会は訪れない。戦艦で敵を撃ち倒す攻撃機に憧れる若者たち。。輸送部隊の生ぬるい任務に不満や苛立ちが募るばかり。。次第に繁栄から衰退していく日本軍。。大量に消費される命と物資。。空襲に遭う本土。。終わらない戦争に何を守ろうとしていたのか...終戦を伝えるラジオが流れる時の軍人たちの思いと、鷹志の投げかける言葉には胸迫る思いが込み上げてきました。

 

鷹志と美しい妹・雪子との兄妹愛と鷹志と妻・早苗との夫婦愛も描かれています。。女性たちの生き様がとても良かった。彫刻家を目指すも挫折をし、陶芸の世界に心酔していく雪子の芯の強さ。夫の幸福だけを願い、健気に尽くす早苗の献身。

雪子「ただ女というだけでこんな目に遭うのかと思うと、悔しくてなりません」

早苗「本当に憎んでいたのは雪子のように戦えなかった自分だ」

相反する二人にどこか共通する魅力を感じた鷹志が二人に注ぐ愛。。戦場では冷静な鷹志も二人の前では意外な一面を見せ、一喜一憂する姿が微笑ましいのです。とにかくこの時代の女性たちの覚悟は凄い...軍人たちの覚悟は少し怖い。

戦争小説は過酷な場面が多く、様々な感情が入り乱れ、すこし疲れますね。。やんちゃな少年期、瑞々しい青春時代を経て暗雲漂う戦争時代と、物語は段々重苦しくなっていきます。でも戦争だからこそ育まれる愛もあります。。読み終わり、冒頭の雪子の兄への手紙を読み返しました。。ホロホロします(;_;)。。どうか穏やかな人生を歩んでほしいなぁと願うばかりです。