みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『革命前夜』 須賀 しのぶ

 

革命前夜 (文春文庫)

革命前夜 (文春文庫)

 

おすすめ ★★★★★

【内容紹介】

この国の人間関係は二つしかない。
密告しないか、するか──。

バブル期の日本を離れ、東ドイツに音楽留学したピアニストの眞山。個性溢れる才能たちの中、自分の音を求めてあがく眞山は、ある時、教会で啓示のようなバッハに出会う。演奏者は美貌のオルガン奏者。彼女は国家保安省の監視対象だった…。冷戦下のドイツを舞台に青年音楽家の成長を描く歴史エンターテイメント。

【感想】

わたしの中で大ヒットでした‼︎クライマックスまで駆け抜けた。。読後は体温の上昇を感じられ、胸の高まりが抑えられない...素晴らしい。久々に震えたわ〜。

監視社会の恐怖、不信感、自由への羨望、暴動、混乱、反体制への過激な制圧、西ドイツと東ドイツの世情、政治情勢...ベルリンの壁が崩壊されるまでの小さな積み重ねが丁寧に描かれていました。

個性豊かな留学生たちにも惹きつけられる。特に二人の天才...正確な解釈でどんな難曲でも演奏する優しくて誰からも愛される美男子イェンツ・シュトライヒと、奔放な演奏で、圧倒的な個性を見せつけるわがままで激しい気性のヴェンツェル・ラカトシュ。この二人に翻弄されながらオルガン奏者のクリスタに恋をするシュウのもどかしい心理描写も良かった。

須賀さんの卓越した表現力に圧倒されたのが音楽描写。灰色に包まれた閉鎖的な世界に彩りを与えてくれます。静かに、安らかに、時には激しく奏でられる名曲たち。思わずオルガン奏者・クリスタが教会で演奏したラインベルガー「カンティレーナ」はググって実際の曲を聴き入ってしまいました\(//∇//)\

 

約30年前に報道されていたベルリンの壁崩壊の裏側には戦争の爪跡に苦しむ人々がいたこと。。国の歴史事情でタブー化される名曲や密告しあう人間たち。。天才たちの才能まで潰されてしまう残酷さ。。自由を求めるには覚悟が必要な時代。。その激動化で生まれた曲。。「音楽にしかできない奇跡がある」と声高々に訴えるシュウの言葉。。クライマックス...言葉通りの奇跡に大きく揺さぶられます。。心打たれてしまいます。。しばらく放心状態。読んでよかった。

初めての須賀作品。他作品も読んでみたい❣️