おすすめ ★★★☆☆
【内容紹介】
母国語とアイデンティティ、歴史と境界線。芥川賞候補、日本エッセイストクラブ賞受賞の台湾生まれで「中国語がへたくそ」な日本語作家のライフワークを、今この国に生きる若い人たちに。「日本語は日本人のためだけのものじゃない」
【感想】
2歳の頃に台湾人の両親と日本に居住し、日本で育つ著者は自然と日本語を話し、学校で「国語」を習い、積極的に日本語に興味を持つ。中学に進む頃、他人から台湾人なのに中国語が話せない事を指摘され、母国語について、台湾人と中国人について、自分の言語について...苦悩していく。思考や表現の全て、日本語を使うことが普通ではあるが、母国語とは言い切れず、その気持ちが強くなるほど、日本語を書く行為に依存していく。「日本語しか話せないただの日本人」ではなく、「中国語ができない日本育ちの台湾人」である自分は「ふつう」じゃない。中国語を取り戻したいと上海へ訪れるが、「中国人にしては中国語が下手」と言われ、生まれつき中国語ができて当然という立場に局面し、さらに苦しみ、祖国(母国語)という幻想に縛られていく。
著者が思い悩む母国語への想いがうまく想像できず、読み進めるのが大変でした。中国と台湾の国意識の違いなど微妙で繊細な関係性を著者の言葉を拾いながら、少しずつではあるが、理解を深めていくことにより、次第に「ふつう」とは何か?今の自分は「ふつう」に日本語を話し、「ふつう」に日本人として生きてる。この「ふつう」を強く求め、苦しみ悩んでいる人がいる。だからこそ「日本語」を大切にし、書く事に依存し、表現することを強く希望した結果、アイディンティーの葛藤を言語化し、伝達する事ができたのだと思います。。