みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『夢見る帝国図書館』 中島 京子

 

夢見る帝国図書館 (文春e-book)

夢見る帝国図書館 (文春e-book)

  • 作者:中島 京子
  • 発売日: 2019/05/15
  • メディア: Kindle版
 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

「図書館が主人公の小説を書いてみるっていうのはどう?」
作家の〈わたし〉は年上の友人・喜和子さんにそう提案され、帝国図書館の歴史をひもとく小説を書き始める。もし、図書館に心があったなら...資金難に悩まされながら必至に蔵書を増やし守ろうとする司書たちの悪戦苦闘を、読書に通ってくる樋口一葉の可憐な佇まいを、友との決別の場に図書館を選んだ宮沢賢治の哀しみを、関東大震災を、避けがたく迫ってくる戦争の気配を、どう見守ってきたのか。 日本で最初の図書館をめぐるエピソードを綴る。知的好奇心とユーモアと、何より本への愛情にあふれる、すべての本好きに贈る物語!

【感想】

フリーライターの「わたし」は国際子ども図書館で取材をした帰りの上野公園で年上女性・喜和子さんと出会う。喜和子さんと「わたし」のタバコの煙の会話は笑った。強烈な第一印象だよ笑。

この出会いが縁となり、「わたし」は喜和子さんに提案された「夢見る帝国図書館」というタイトルの小説を書く。喜和子さんの死後、「わたし」は喜和子さんとの会話や縁のある人々たちの思い出話を紐解き、喜和子さんの魅力的な人物像には想像できない辛い過去を知る。
喜和子さんと帝国図書館...ふたり?の人生に迫る物語。

 

現実のお話と交互に差し込まれる帝国図書館を主人公とした小説が良かった。日本初の図書館創立を始め、蔵書確保、図書館建設、増設の資金繰りに翻弄する図書館館長の苦労話。予算は戦費に回されちゃう(...悲しいなぁ)。。図書館に通う著名な文豪たちのエピソード。図書館が樋口一葉に恋する物語はほろ苦い。上野動物園の象の花子たちの悲劇。表現の自由は奪われ、お蔵行きの本たち。関東大震災から東京大空襲。焼けた上野公園に立ち並ぶバラック、モダンガール、ウーマンリブなど...大正から昭和の図書館と戦争の歴史。ユーモアを交えて描かれていたので、読み易くて面白かった。

わたしは京成線沿線に住んでいて、親しみのある上野の町。博物館、美術館、動物園、藝大など上野〜谷中界隈の懐かしさと新しさが融合した街並みや今は廃止となった博物館動物園駅など忘れていた風景が蘇り、親しみのある風景を思い浮かべ、これから変わりゆくであろう街をまだまだ楽しめると思うと...ワクワクするのです。。