みみの無趣味な故に・・・

読書、時々映画、絵画鑑賞の感想を書いてます。

『活版印刷三日月堂 空色の冊子』 ほしお さなえ

 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

小さな活版印刷所「三日月堂」。店主の弓子が活字を拾い刷り上げるのは、誰かの忘れていた記憶や、言えなかった言葉―。弓子が幼いころ、初めて活版印刷に触れた思い出。祖父が三日月堂を閉めるときの話…。本編で描かれなかった、三日月堂の「過去」が詰まった番外編。

【感想】

三日月堂シリーズ番外編。本編では思い出の中で登場する人物たちの物語。

 

「ヒーローたちの記念集」シリーズ第二弾の「我らの西部劇」で登場するライターだった亡き父の出版企画の挫折物語。

 

「星と暗闇」弓子の父と母の出会いから別れ。父・修平の喪失感を描いた物語。

 

「届かない手紙」祖母と弓子の思い出の一日。「月野弓子」の名前の由来..亡き母との約束と決意...初めて弓子が活版印刷で作るレターセット...母に想いを馳せる物語。

 

「ひこうき雲」カナコの大学時代の親友・裕美の物語。歌手になる夢を諦め、親の薦めで結婚した裕美。夫と二人の娘と幸せな暮らしをしていたが...夫の浮気発覚により不穏が..。

妻として、母として...突き刺さる物語でした。

 

「最後のカレンダー」三日月堂の店主・親父さん(弓子の祖父)の最後の仕事。伝統が失われ、消えていく。失ったものは二度と復活しないと語る親父さん。印刷所も親父さんも活気が無くなり、寂しさが募るけどインクの匂いと工場の雰囲気、親父さんの優しさからほのかな温かさが伝わる。古き物があたらしい。その感覚はいつまでも無くならないなぁ。

 

「空色の冊子」弓子の祖母・静子が亡くなり、印刷所を閉めた祖父。活字と印刷機の処分に踏み込むことができず、川越の街を巡り、妻と印刷所の思い出を巡らす。その最中、東日本大震災に遭う。弓子の通った保育園の卒園記念冊子が地震の影響で作れないと知り...。

冒頭から泣けた。。涙を止めることができなかった。「自分の手の白さにびっくりする。こんなに白かったのか...印刷の仕事をしているころは、手はいつも黒ずんでいた。」大切な人を失う寂しさ。生きるために全うした仕事。全てを奪う大地震。無力さ、やるせなさ、無念に胸が締め付けられる。「勇気を持って、元気に進もう」言葉の力や差し伸べられる人の手によって生きる力に繋がるんだと痛切に思いました。

 

弓子が川越に引っ越しするまでの過去の話。。懐かしさや寂しさが込み上げてくるのは、シリーズを通して、印刷所に訪れる温かい人たちへの親近感が湧いていたからかもしれない。さて..未来はどんなだろ?

 

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