みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『月の満ち欠け』 佐藤 正午

 

岩波文庫的 月の満ち欠け

岩波文庫的 月の満ち欠け

 

おすすめ ★★★☆☆

【内容紹介】

新たな代表作の誕生! 20年ぶりの書き下ろし
あたしは、月のように死んで、生まれ変わる──目の前にいる、この七歳の娘が、いまは亡き我が子だというのか? 三人の男と一人の少女の、三十余年におよぶ人生、その過ぎし日々が交錯し、幾重にも織り込まれてゆく。この数奇なる愛の軌跡よ! さまよえる魂の物語は、戦慄と落涙、衝撃のラストへ。

【感想】

文庫本に挟んであった作者からの読者へのメッセージを先に読んだ。

「偉い先生が書いた小説だと思われそうでしょ?直木賞受賞だし、、そうじゃないんです。何か勉強になる小説でもない。(中略)ただおもしろがってもらえればいい。どうぞ楽しんでください」

おもしろかった。。楽しかった。。ではおすすめするか?と言われると...そこは難しい笑。なんとも込み入った話だなぁと物語を整理整頓したくなる。。過去や現在行ったり来たり。。でも素直に入り込むから不思議。。

 

前々..前世?の女性・瑠璃が何度も生まれ変わり、愛する男性に会いに行く物語。。会いたい一心で無鉄砲な行動を繰り返す瑠璃の一途で健気で純愛...と思って良いのか?小学生が女として大人の男性に会いに行く...この時点で圧倒されちゃう。なぜか会いに行く前に命を落としてしまう瑠璃の儚い死(←淡々とした扱いで妙に気になる)

命のバトンを繋げて、復活をし、また恋人に会いに行く瑠璃にとってみれば死はただの失敗。関わった人達からしたら、迷惑な話である。

生まれ変わりを受け入れる人たちの反応も様々。。共感する人、狂ってしまう人、今後狂わされそうな人。待ち受けてる人。。もうひとつの生まれ変わりが気になる。生まれ変わりなのか否か...そこは想像するしかないけど、人を愛する思いが強ければ、生まれ変わり、その人と再会できる。驚きの設定ではあるが、現実的にもあるのかもしれないと思えた。。でも瑠璃の恋心が伝わらなかった。。もう少し生まれ変わっても会いたい気持ちを持ち続ける恋心を描き切って欲しかった。人を愛し続ける事ができる女性たちが羨ましいけど、哀しみも背負いそうで...前世の記憶はない方がよさそう...佐藤正午さんは構成が巧妙で最後までグイグイ引き込まれて、気づけばラストまで一気読み。不思議な達成感がある。。何事にも石頭にならずに柔軟に受け入れたい。。