みみの無趣味な故に・・・

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『やがて海へと届く』 彩瀬 まる

 

やがて海へと届く (講談社文庫)

やがて海へと届く (講談社文庫)

  • 作者:彩瀬 まる
  • 発売日: 2019/02/15
  • メディア: 文庫
 

おすすめ ★★★☆☆

【内容紹介】

すみれが消息を絶ったあの日から三年。真奈の働くホテルのダイニングバーに現れた、親友のかつての恋人、遠野敦。彼はすみれと住んでいた部屋を引き払い、彼女の荷物を処分しようと思う、と言い出す。親友を亡き人として扱う遠野を許せず反発する真奈は、どれだけ時が経っても自分だけは暗い死の淵を彷徨う彼女と繋がっていたいと、悼み悲しみ続けるが――。

【感想】

東日本大震災に遭遇し、九死に一生を得た著者が回復するために描いた物語。

消息を絶った親友の死を受け入れられないまま、現実の日々が通り過ぎていく。。「形見分けをしたい」というすみれの恋人や死者の意思を代弁するすみれの母親。親友を亡き者とする周囲の態度に反感を覚え、すみれとの繋がりを信じ、悼み続ける真奈。

「あの日」から親友への想いを馳せ、心は立ち止まったまま。。現実の章とある女性が現れる夢?の章が交互に描かれ、真奈の心の葛藤、浮遊感、不安が伝わる。。大切な人を喪うというのは苦しまなければならない。苦しむことが正しい。。胸が締め付けられるがわたしも大切な人を失った時にこういう想いに駆られたことがある。。すみれとの過去を思い巡らす日々の中で、新たな出会い、恋愛をし、ゆっくり前は進み、親友を浄化していく。。深い闇の中からほんの少し光が射し、前へ進む。。振り返ると笑顔のあの子に会えるような...。死を受け入れること、向き合うこと。。覚えておくこと...残された者はこうやって生きていくんだろう。