みみの無趣味な故に・・・

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『偽りの春』 降田 天

 

偽りの春 神倉駅前交番 狩野雷太の推理

偽りの春 神倉駅前交番 狩野雷太の推理

  • 作者:降田 天
  • 発売日: 2019/04/26
  • メディア: 単行本
 

おすすめ ★★★★★

【内容紹介】

高齢者詐欺グループのリーダー、光代は、手足として使っていたはずの仲間に金を持ち逃げされてしまう。さらに、彼女の過去の犯罪をネタに、一千万円を要求する脅迫状が届く。追い詰められた彼女は、普段は考えない強引な方法で事態の打開を図るが、成功したと思われたそのとき、1人の警察官が彼女に声を掛けてくる――。「落としの狩野」と言われた刑事を主人公に、人々の一筋縄ではいかない情念を描く、日本推理作家協会賞受賞作「偽りの春」収録、心を震わすミステリ短編集。

【感想】

「あなたは5回、必ずだまされる」という帯文の通り...5話のミステリー短編集。

犯人の意外な心情と追い詰める刑事のやりとりが読む手にも緊張感を漂わせる。コンプレックスの奥底を疼かせる人間心理が秀逸だと思う。

「鎖された赤」少女を監禁する大学生の抑えきれない欲望のルーツ。意識と連鎖の怖さを知る。

「偽りの春」高齢者詐欺グループのリーダーが恐喝される。寂しい心が騙されやすい。切ない。

「名前のない薔薇」元看護師が「美人すぎる園芸家」と注目される。愛しいひとに輝かしい人生を捧げてしまった泥棒の愛。

「見知らぬ親友」美大に通う女子たちの疑心と純粋さの思い違いがねじ曲がる友情。この話が一番心疼く。。凡人の小さな悪意を引き離すかのように天才の悲劇的展開が次の話に繋がる。

「サロメの遺言」人気低迷のアイドル声優が謎の死を遂げる。自殺か?他殺か?狩野に恨みを持つ小説家の思惑が絡み、交番勤務の狩野刑事の過去が暴かれる。。ラストの予期せぬ結末。。前話の天才芸術家を巻き込み、罪を犯す人間の底知れぬ心情描写に圧倒されました。。面白かった。