みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『展望塔のラプンツェル』 宇佐美 まこと

 

展望塔のラプンツェル

展望塔のラプンツェル

 

おすすめ ★★★★★

【内容紹介】

労働者相手の娯楽の街として栄えた多摩川市は、貧困、暴力、行くつく先は家庭崩壊と、児童相談所は休む暇もない。この荒んだ地域に寄り添って暮らすカイとナギサは、街をふらつく幼児にハレと名付け面倒をみることにする。居場所のない子供たち。彼らの幸せはいったいどこにあるのだろうかーー。

【感想】

息苦しい。やるせない。受け止めきれない。自分の弱さを認識した。

貧困、暴力、育児放棄などによる家庭崩壊。。児童相談所、こども家庭支援センター、保育所、学校、警察の連携が「各家庭」の事情(親の理不尽さ、家庭内に踏み込めないこと)により、困難を窮する場面にもどかしさもあるが、救いたくても救えない状況に虚しさや疲労が募る職員の気持ちもひしひし伝わる。虐待を受けている子供が施設に保護されることは解決策として最も適していると思われるが...「正しいこと」が子供にとってベストとは限らない。

殴られても苦しくても「転んだ」と言い張る子供の訴え。親に愛されたいという遺伝子が生まれながらに組み込まれてる。。母子家庭の貧困により、子供と心中をする母娘。子を殺したい気持ちはないが、生きる判断力はなくなり、死だけの思考。。育児放棄により、衣食住を蔑ろにされ、人間的扱いを受けられない子供。。性的虐待を受ける少女の壮絶な自己防衛。。親も環境も選べない子供たちにとって「家族」は大切な存在でかけがえのないものなのだと身に染みる。。

「子供は死ぬために生まれてきたんじゃない」

「今日のあたしたちは明日はもういない。毎日毎日生まれ変われたら。」

この願望が胸に突き刺さる。。あたりまえな日常を過ごせるわたしは、いかに幸せだったのかを痛感する。。虐待を受けた子が連鎖を止め、衣食住に困らず、日々無事に生きる奇跡に涙が止まらなかった。。暴力が否応なく出る。乱暴な世界を受け止める事ができず、居た堪れなくなる。現実に虐待を受けてる子供たちの必死に立ち向かう小さな力を支える人達。。過酷だったが、希望がある話で良かったと心から思える。