みみの無趣味な故に・・・

読書、時々映画、絵画鑑賞の感想を書いてます。

『夏物語』 川上 未映子

 

夏物語

夏物語

  • 作者:川上 未映子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2019/07/11
  • メディア: 単行本
 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

パートナーなしの妊娠、出産を目指す夏子のまえに現れた、精子提供で生まれ「父の顔」を知らない逢沢潤。生命の意味をめぐる真摯な問いを、切ない詩情と泣き笑いに満ちた極上の筆致で描く、21世紀の世界文学! 世界十数ヵ国で翻訳決定!

【感想】

第一部は夏子の回想や姉・巻子との会話から母と姉と祖母との貧困な幼少時代や女性の身体の変化の不思議、母と祖母の死を巡らせ、漠然とした「生」や「性」に対する疑問などがちりばめられている。大阪弁の会話が読みづらい上に会話が飛びすぎて、長さも感じてしまい読むのに困難した。。が、幼少の頃の生き別れた父との記憶が夏子の人間形成や体の悩みに繋がると思われる。

第二部は時が進み、夏子が小説家となり、出産の気持ちを募らせる。恋人もなく、結婚の予定もなく、セックスに対しての嫌悪感もあるが、強く子供を望み、「精子バンク」という存在に興味を持つ。子どもを産める希望と不安の中、精子提供で生まれた男性・逢沢や夏子の関わる女性たち(子どもを望まない独身編集者、シングルマザーの作家、夫婦仲が冷めた子持ちの既婚女性、精子提供で生まれ、養父に性的虐待を受けていた女性)との関わりにより夏子は子どもを産む葛藤に悩む。

AID(非配偶者間人工授精)のシステムや国内と海外の価値観の違い、精子提供で生まれてきた子どもの悩みや罪悪感を持つことなども知り得た。。出自問わず、子に対する親の向き合い方が大事なんじゃないかと思うけど、当事者の気持ちは想像だけではなんとも言えない。。

 

「生まれること、生まれないこと」

「どうして子どもを生もうと思うの?」

「親は自分の子どもにだけは、どんな不幸からも逃れられるように願うわけでしょう。でも自分の子どもがぜったいに苦しまずにすむ唯一の方法は、その子を存在させないことでしょう」

 

環境の全く違う女性達の子供に対する切実な想いに力が入ってしまう。。表現し難い何かに急き立てられてるような...責め立てられているような...何が正答なのかを見つけられないまま...次の話に進めないような...子宮のあたりがキューっとさせられ、その重みが一気に胸に迫られる思いになる。。気づけば、わたし(3人の子持ち既婚者) はこの女性達に自然と溶け込み、正当化をしたいのかどうかもわからず、、ひとつひとつの議論が心にグサグサと刻まれていき、苦しみが纏う。子どもを産む事は「間違った選択」と主張する善百合子(AIDで生まれた女性)の訴える言葉の強さにしばらく放心しました。

女性にとって出産は大きな問題なんだと読んで改めて考えた。。育てる責任はあっても、子どもを世に送り出す責任までは考えに及ばなかった。。間違った選択なのかどうかはともかく、その選択をしたら戻る事はできないことは実感してる。生きる素晴らしさを体感させてあげるのも、子供に唯一できる親の務めなのかなぁとも思ってる。。読み終えて、著者の力強い言葉の数々にどっと疲れた。。女性だからだと思う。一読あれ..です。。