おすすめ ★★★☆☆
【内容紹介】
東京近郊で連続する誘拐殺人事件。誘拐された子供はみな、身代金の受け渡しの前に銃で殺害されており、その残虐な手口で世間を騒がせていた。そんな中、富樫修は小学六年生の息子・雄介の部屋から被害者の父親の名刺を発見してしまう。息子が誘拐事件に関わりを持っているのではないか?恐るべき疑惑はやがて確信へと変わり…。既存のミステリの枠を超越した、崩壊と再生を描く衝撃の問題作。
【感想】
「顔見知りのあの子が誘拐されたと知った時、驚いたり悲しんだり哀れんだりする一方で、わが子がねらわれなくてよかったと胸をなでおろしたのは私だけではあるまい。」
息子の知り合いの子供が誘拐され、殺害される。富樫修はどこか他人事で傍観者として過ごしていた。
「悲惨な事件の連鎖はどこまで続くのだろう。しかしわが家は相変わらず平和だし、この先もずっと平和であり続けるはずだ」
犯人逮捕とはならず、相次ぐ児童誘拐殺人事件。地域の父親による自警団に冷ややかな視線を送り、楽観する富樫。急展開の事態に。。
「未来は運命ではなく、神が賽を振った結果でもなく、ましてや人から与えられるものでもなく、己の意志で切り拓くものである」
小学生の息子の部屋から続々と出てくる誘拐事件に関係する証拠品。。加害者疑惑が父の心を揺るがす。。そして...父は混沌の世界へ。絶望、願望、逃避...と、マルチエンディングのような父の未来予想図が次から次へと展開されるも全ては崩壊の結末。。我が子が犯罪者となってしまう恐怖。我が子を救いたいのか?我が身を守りたいのか?自分本意な心に侵されていく父の孤独な戦い。
被害者、加害者、どちらも救われないのだけど、加害者となるわが子にどう向き合っていいのか。。こればかりは、想像の域を超えられない。