みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『ソクラテスの妻』 柳 広司

 

ソクラテスの妻 (文春文庫)

ソクラテスの妻 (文春文庫)

  • 作者:柳 広司
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2014/12/04
  • メディア: 文庫
 

おすすめ ★★★☆☆

【内容紹介】

皆さんがおっしゃるほど、わたしはあの人にとって“悪い妻”だったのでしょうか?ソクラテスの死後、悪妻クサンティッペが亡夫の実像を語る表題作の他、オイディプス、ゼウス、ミノタウロス、イカロス、タレス…いつか耳にしたギリシアの神や人々が、生き生きとよみがえる。平明な文体に深遠な哲学が沁み込んだ掌編集。

【感想】

ギリシャ神話を題材にしたショートストーリー。神話や逸話に詳しくないわたしでも楽しめた。

 

☆呪いや神託に怯える神たち。

「父を殺し、母と交じる」と神託が届き、家を出るオイディプス...頭にかっと血が上り谷底に落とした老人が生き別れの父...。神ならもっと冷静にね(「オイディプス」)

王は息子に打ち倒される呪いに怯え、生まれたばかりの息子や身ごもった妻までも飲み込む全治全能の神・ゼウス...。なのに無類の女好き。やれやれ(「神統記」)

 

☆ちょっと可哀想な人たち。

博識アナカルシスはギリシャの習俗を知り、祖国の習俗を忘れた王子...。うっかりミスで死亡(「異邦の王子」)

アテナイきっての話し手・ミュシアスの最期。恐ろしい...。口は芸にもなるけど災いにもなるよね(「アイギナの悲劇」)

 

☆☆女が一番怖い。

男を利用して、父・クレタ王と祖国への裏切りに恍惚になるアリアドネ...。サイコパスだよ(「恋」)

戦争から帰る王を待ち続けた王妃・クリュタイメストラ。最愛の娘を夫に殺された復讐の女神...。強き王でも妻の前では油断するのね(「狂いの巫女」)

イアソンに一目惚れをしたメデイア。一途な女性。イアソンのためなら家族も子供も殺す...。イケメンイアソン、よく若い女性にうつつを抜かせる勇気があるわ笑(「王女メデイア」)

 

☆☆☆面白かった物語。

美しい容姿のオリンポス十二神。鍛冶屋の神・ヘファイストスだけが醜く、コンプレックスを抱く。彼の妻は愛と美の女神・アフロディテ(ヴィーナスなんだね)。彼女の浮気に嫉妬し、復讐をする...。美醜とは何か?信念を持って打ち込む姿こそ美しい。最後の醜男の美に神々しさを感じる(「オリンポスの醜聞」)

偉大なる父を持つ息子の悩み。ミノタウロスを閉じ込める巨大迷宮を作る天才工匠・ダイダロス。その父を超えるにはどうしたらよいのか?...。天才の息子って(≧∀≦)💦イカロス、名前を覚えたよ(「ダイダロスの息子」)

天下一の悪妻・クサンティッペ...。柳さんにかかると、悪妻が可愛らしい妻に思える。減らず口の夫もいい勝負。笑(「ソクラテスの妻」)

 

さらっと読めた柳広司流ギリシャ神話。興味深い人物をウィキペディアで検索しちゃった笑。名画鑑賞もこれから楽しめそう。。