みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『神様のカルテ3』 夏川 草介

 

神様のカルテ (3) (小学館文庫)

神様のカルテ (3) (小学館文庫)

  • 作者:夏川 草介
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2014/02/06
  • メディア: 文庫
 

おすすめ ★★★★★

【内容紹介】

自己満足で患者の傍にいるなんて偽善者よ。

栗原一止は、信州にある「24時間365日対応」の本庄病院で働く内科医である。医師不足による激務で忙殺される日々は、妻・ハルの支えなくしては成り立たない。昨年度末、信濃大学医局からの誘いを断り、本庄病院残留を決めた一止だったが、初夏には恩師である古狐先生をガンで失ってしまう。 夏、新しい内科医として本庄病院にやってきた小幡先生は、内科部長である板垣(大狸)先生の元教え子であり、経験も腕も確かで研究熱心。一止も学ぶべき点の多い医師だ。
しかし彼女は治ろうとする意思を持たない患者については、急患であっても受診しないのだった。抗議する一止に、小幡先生は「あの板垣先生が一目置いているっていうから、どんな人かって楽しみにしてたけど、ちょっとフットワークが軽くて、ちょっと内視鏡がうまいだけの、どこにでもいる偽善者タイプの医者じゃない」と言い放つ。彼女の医師としての覚悟を知った一止は、自分の医師としての姿に疑問を持ち始める。そして、より良い医者となるために、新たな決意をするのだった。

【感想】

今作が一番深く刻まれるものがあった。1.2巻は多忙な地域病院で温かい登場人物たちと心温まる交流の中、人の生死を通して、医師とは?、家族とは?と考えさせられるものがあった(前巻参照→『神様のカルテ2』 夏川 草介 - みみの無趣味な故に・・・

今回は厳しい現実を突きつけられたイチ(栗原一止)の苦悩が強く伝わってくる。。

「医者っていうのは、無知であることはすなわち悪なの」小幡先生の厳しい一言。

現代医療が日々進化していく中、経験と良心だけの診察では時代についていけないだけではなく、救える命も救えなくなる。。良性腫瘤を癌と誤診をしてしまうイチ。小幡先生の言葉ひとつひとつが衝動を与える。イチの前進の回でした。

ハルと夜の松本城。氷彫フェスティバル準備を二人で眺めるシーンが良かった。完成しても日の光で刻一刻と溶けてしまう氷彫刻。それでも今この瞬間のために彫刻をする人たちが懸命にノミと槌をふるう姿。。刹那の情景。。真剣に生きようとする人間の息遣い。美しい光景に胸打たれる。

大泣きしてしまったのは、内科部長の大狸先生との宴席。三つの杯。大狸先生とイチ...もう一つの空席。。号泣だよ。。泣かないつもりだったのに、やっぱり泣いてしまったクリスマスイブでした🎄