みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『薔薇の木枇杷の木檸檬の木』 江國 香織

 

薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木 (集英社文庫)

薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木 (集英社文庫)

  • 作者:江國 香織
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2003/06/20
  • メディア: 文庫
 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

この物語の主人公は9人の女性たち。花屋のオーナー、雑誌編集者、モデル、主婦、アルバイト、会社員。その9人がそれぞれに恋したりされたり、結婚したり離婚したり、浮気したりされたり、妊娠したりしなかったり。それはもう、誰にも止められない物語。頬をなでる春の風のように、そっと始まる新しい何か。日常というフィールドに優しく拡がる研ぎ澄まされた恋愛エネルギー小説。

【感想】

夫婦めいた夫婦。この言葉はしっくりくる。夫婦を演じているわけではない。お互い理解はできないけど、安心、必要な存在、家は大切な空間でもある。

主な登場人物と関わる人々の視点(10人以上)で話はコロコロ変わる。多い登場人物の把握は苦手なんだけど、わかりやすい人物像だったので混乱する事なく読めました。

ホームパーティー好きのキャリアウーマン・れいこ。浮気を楽しむれいこの夫・土屋保は家にいる完璧な妻の安定感に安心してるが、居心地が悪く、事務所に寝泊まりし、たまに帰宅する生活。この土屋保は悪い男だと思う。でもすごくモテる。愛人・衿が性格も見た目もめちゃいい女なのが何だか悔しい。第二の愛人?しかも妻の部下に手を出してしまったのが恐怖の始まり。。夫の浮気の疑惑を持ちつつ確証を得たくないれいこ。夫の理想妻でいること、友達を招き完璧なホームパーティーをすること。。すごく疲れそう。破綻が見える。

夫と愛犬と暮らす専業主婦・陶子。夫に依存し、妻という安定の幸せに満ち溢れてる。唯一、夫が満たさない肉体の幸せ。それだけの関係を持つ男と遊ぶ陶子の、、夫、愛人との線引きの冷静さが一番怖い。陶子のような人が理想の結婚生活の条件に合った夫と最後まで手を取り合って幸せな生活を送っていくんだろう。

夫と花屋を共同経営するエミ子。一番健全そうな妻。夫と結婚当初から十一年間、夫婦としての違和感を持ち続けたエミ子の離婚決意。花屋の共同経営は持続。自分から離婚をしたが二人で暮らした家から漂う「夫不在」感の悲しみに陥る。「そのままで居られないことはなかったのに」の一文に悲しみが募るわ。。「そのまま」が辛くて苦しくて決断したのに...「そのまま」でも良かった事に気づくのは、この上ない辛さだと思う。程よいって気づきにくいのかなぁ。。

 

理想の夫婦なんて夢のまた夢。。程よいが一番いいと思いつつ、欠けてる部分が色濃く浮かび上がっちゃう。ぼやかしていくのって、とっても大事ね...恋は盲目...結婚はかすみ目がちょうどいい?。陶子が一番上手にぼやかしてる笑。

不倫を綺麗な話とは思いたくないけど、いつも江國さんの文体が心地良いからか、ふんわりとした日常の中でさらりと恋愛に発展して、素敵な空間に錯覚しそうになる。でも非日常の世界と思って読んでます。。現実はこんなんじゃないでしょ笑。