みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『本と鍵の季節』 米澤 穂信

 

本と鍵の季節

本と鍵の季節

 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

堀川次郎は高校二年の図書委員。利用者のほとんどいない放課後の図書室で、同じく図書委員の松倉詩門(しもん)と当番を務めている。背が高く顔もいい松倉は目立つ存在で、快活でよく笑う一方、ほどよく皮肉屋ないいやつだ。そんなある日、図書委員を引退した先輩女子が訪ねてきた。亡くなった祖父が遺した開かずの金庫、その鍵の番号を探り当ててほしいというのだが……。

放課後の図書室に持ち込まれる謎に、男子高校生ふたりが挑む全六編。

【感想】

図書委員をなんとなく始めた堀川くんと松倉くん。。熱意があるわけではないけど、真面目に図書当番の仕事をしてる男子高生たちに好感が持てる。。2人の図書室での会話が面白い。大人びているけど、くだらないと自覚しつつ真剣に会話をしてる所が男子らしい。静かな図書室で暇を持て余す2人に持ちこまれる謎や日常で起きる不可解な出来事を会話で解き明かし、友情を深めていく。。

お互いの距離感がグッと近くなる「昔話を聞かせてくれよ」。。お互いの昔話をする二人。堀川くんは鋭い観察眼も時には人の心を抉ぐる事になるという父の教えを思い出す。松倉くんはある自営業者の話をしてその謎を堀川くんと解明しようと。。その流れからの最終話「友よ知るなかれ」で堀川くんが松倉くんの心に訴える優しさと切実な願いに胸打つものがありました。この二話は心揺さぶられた。弱さ、迷いがどういう着地点になるか、現実、現状によって、心の隙間の埋め方や歩む道が変わる事もあるし。。どうか2人にはこれからもたわいない会話を静かな図書室でずっと続けて欲しい。そう思えるほど素敵な図書委員の友情ミステリーでした。