みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『ハケンアニメ」 辻村 深月

 

ハケンアニメ! (マガジンハウス文庫)

ハケンアニメ! (マガジンハウス文庫)

 

おすすめ ★★★★★

【内容紹介】

伝説の天才アニメ監督王子千晴が、9年ぶりに挑む『運命戦線リデルライト』。プロデューサー有科香屋子が渾身の願いを込めて口説いた作品だ。同じクールには、期待の新人監督・斎藤瞳と人気プロデューサー行城理が組む『サウンドバック 奏の石』もオンエアされる。ネットで話題のアニメーター、舞台探訪で観光の活性化を期待する公務員…。誰かの熱意が、各人の思惑が、次から次へと謎を呼び、新たな事件を起こす!

【感想】

アニメ制作に関わる人々の姿を描いたお仕事小説。

「ハケン」とは「覇権」のことで、1クールのアニメ作品のBD、DVDの売上1位の作品に与えられる称号。それぞれの「覇権」に対する想いは様々だけどアニメへの熱い想いや現場で巻き起こる困難に立ち向かい、ひたむきに打ち込む姿勢に何度も胸が込み上げた。

アニメ制作の裏側から監督、プロデューサー、声優、音響、アニメーターの仕事内容が細かく説明され、一つの作品を作り上げるまでの大変な過程とアニメ業界の裏事情、華やかさはなく厳しさの連続、重圧からの焦り、投げ出したくなるけど、彼らががむしゃらに前進するのは「アニメが好き!」「ファンのために!」という気持ちが大きく胸にあり、作品への情熱、意気込み、愛がひしひし伝わり、作品を作り上げるというのは人間たちの大きな支えによるものだと一話(オムニバス方式)を読むたびに心熱くなり、駆け出したくなる気持ちにさせられました。アニメ作品の舞台になった地域の町おこしに躍起となるアニメを見てこなかった公務員の話も面白かった。アニメを受け入れられない地元の人たちに根強く訴えかけ、作品を何度も見て勉強し、「聖地巡礼」をアニメ関係者と協力して、成功をさせる。。全く違う職種でもアニメに関わりを持ち、作品に愛を注いでいく。。聖地には登場人物総出!謎の美中年登場(意外な人と繋がりあり)。夢の競演だわ。。

アニメ制作の世界を通して、働く人々へのエールを送るこの作品も辻村さんの周りには沢山の人の手の助けがあり、支えられて作られているのだと思うと、大切に作り込まれた作品を読めるわたしは幸せだと思う。。王子の『リデルライト』が無性に見たい‼︎