みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『遠い迷宮』 阿刀田 高

 

遠い迷宮 阿刀田高傑作短編集 ミステリー (集英社文庫)

遠い迷宮 阿刀田高傑作短編集 ミステリー (集英社文庫)

 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

良家の若妻・真樹子は、そろそろ1歳の娘と朝の時間を優雅に過ごしていた。そこへ、出産の時に病院で世話をしてくれた初江が、突然訪ねてくる。表面は人のいいおばさん風だが、何か薄気味悪い感じのする女。彼女が帰った午後、刑事がやって来て…「来訪者」より。人生、男女、心など、人間が生み出す数々の謎をモチーフに描く、鮮やかで洗練された珠玉のミステリー10編。

【感想】

初期の阿刀田さんの短編作品を集めた一冊。

どの作品も最後までオチがわからない。想像もつかない結末に感嘆してしまう。。傑作。

「趣味を持つ女」相次ぐ香典ドロボウ。刑事は捜査をする中、葬式に現れ、棺に「品物」を入れる奇妙な女が浮かび上がる。(木を隠すなら森の中。。?泥棒かと思いきや。この発想が浮かぶのがすごい)

「来訪者」内容紹介参照↑(本当の来訪者は...1歳の娘?これは怖いよ)

「ナポレオン狂」ナポレオンを敬愛しナポレオンに関するあらゆる物の蒐集にエネルギーを注ぐ薬問屋の男。ナポレオンの生まれ変わりだと信じる、ナポレオンの容姿に酷似した九州男子。この二人が出会う...。(二人の出会いの描写は特にないけど、ほんの少しの違和感と想像で恐怖の闇が広がる。ラスト一行は不安を煽られるけどクスッとしちゃう)

「蜜の匂い」小金を持つ女に近づく男は結婚詐欺師だった。金の匂いを嗅ぎつける詐欺師のプロ。騙された女は...。(爽快だわ。お金の匂いがわかる詐欺師のプロも死の匂いには鈍感。。その筋のプロの技はさすが笑。面白かった〜)

 

あとがきの作者の解説も面白い。話のアイデアの思いつきは日常を過ごしながら不謹慎なことを考える。奥様の初めての出産時に母親と生まれたばかりの赤ちゃんとのちょっとした空白の時間からすり替わるならこの時だなと考える。。こうやってブラックユーモアな作品が生み出されるのね。父親になる瞬間なのに冷静で驚くわ。。笑

阿刀田さんの物語を読むと「狂気と正常」この境界線を明確に分けるのは難しいといつも思う。人から見れば自分も「狂」なのかもしれない。。